白髪の原因

白髪の原因とメカニズム解明!毛包幹細胞が色素系に送るシグナルとは

2018/11/23

 

白髪の原因とメカニズムを浮きぼりにする「毛髪の科学(全4回シリーズ)」、最終回の今回は、幹細胞(色素細胞を作る大親分)を掘りさげます。

まずは、これまでの要約から。

 

第1回目
  • 色素とは、特定の色の光を反射して、それ以外の色の光は吸収する物質。
  • 黒色の色素が多い黒髪は、光をすべて吸収するので、髪が黒く見える。
  • 色素がなくなった白髪は、光をすべて反射するので、髪が白く見える。

 

詳しくは、以下のリンクからご覧ください。
⇒ 白髪の原因とメカニズム解明!メラニン色素で黒髪に見える理由とは?

 

第2回目
  • メラニンは微生物からヒトまで、全生物の体内に存在する色素。
  • メラニンには、「黒色のユーメラニン」と「黄色のフェオメラニン」がある。2種類の混ざり具合で、黒髪や金髪などの色が決まる。
  • メラニンを作ることができるのは、色素細胞(メラノサイト)のみ。
  • 「黒髪のもとユーメラニン」は、「紫外線」と「紫外線によって生じたフリーラジカル」を吸収して、細胞を「さびつき(DNAの損傷による光発癌)」から守っている。

 

詳しくは、以下のリンクからご覧ください。
⇒ 白髪の原因とメカニズム解明!紫外線とメラニンの関係やチロシンとは

 

第3回目

【白髪の原因1】
黒髪のもとである色素(ユーメラニン)を作り出している、色素細胞(メラノサイト)が減った、またはなくなった。

【白髪の原因2】
色素細胞(メラノサイト)の中で、実際に色素(ユーメラニン)を作っている、メラノソームが減った、またはなくなった。

【白髪の原因3】
メラノソームの中で、黒髪のもとである色素(ユーメラニン)が、作られなくなってしまった。

【白髪の原因4】
メラノソームの中で、黒髪のもとである色素(ユーメラニン)は作られたが、その色素が毛髪まで運ばれなくなってしまった。

 

黒字部分の出展:FRAGRANCE JOURNAL 2014年3月 30ページ
(赤字部分は当サイトによるものです)

 

詳しくは、以下のリンクからご覧ください。
白髪の原因とメカニズム解明!黒髪のもとメラニンを作る色素細胞とは

 

これまで3回にわたって、黒髪のもとである色素ユーメラニンの経路を追いかけてきました。そして分かったことは、

「白髪が増える本当の原因」は、「黒色の色素ユーメラニン」の経路が絶たれること。

 

もはや、残る疑問はただ1つで、

経路の絶たれるメカニズムが、解明されているのかどうか。

 

何が明らかで、何が不明なのか、今回で決着をつけてしまいましょう。

 

白髪の原因とメカニズム~医学大辞典の「白髪」

白髪の原因とメカニズム、その原点を見つめるために、当サイトで最大限に尊重する「南山堂 医学大辞典」を開きます。

この辞典で「白髪」を引くと、「⇒ 白毛」となっていました。つまり「白髪」は、医学的な正式名称ではなかったわけです。

 

しかも、「白毛」に読み仮名がふられていないので、行きつくまでに時間がかかります。結局「はくもう」で、やっと目的の場所にたどりつきました。

 

出展:南山堂 医学大辞典 表紙

 

出展:南山堂 医学大辞典
1954ページ

 

まず気がつくのは、この中に「原因」という言葉がないという点です。医学大辞典は「原因」という言葉を使わないのかといえば、そんなことはありません。

第2回目では医学大辞典の中で、フリーラジカルが「光発癌の原因」と記述されていることを確認しました。

 

どうやら医学的には、白髪に関して「原因」という言葉は使われないようです。

白髪に対する医学的な考えかたの基本が、このページに表現されているはず。かなりむずかしそうですが、白髪の原点ですから、全文を解読します。

 

最初の文章は、

毛母のメラノサイトのメラニンの数的変動や機能異常によって、毛髪が白色または灰白色化した状態をいう。

「の」が3つ続いて、日本語的にはどうかと思いますが、内容はすべて分かります。

 

要するに白髪というのは、色素細胞(メラノサイト)が作って毛髪に運ばれるはずの、「黒色の色素ユーメラニン」がなくなった状態ということです。

ユーメラニンが毛髪に運ばれていく経路のうち、どこで、なぜ絶たれたのか、それこそが白髪の原因なのです。

 

ところが、いまのところ因果関係が医学的に特定されていないため、医学大辞典としては原因を解説することができないのでしょう。

そのため、メラニンに異常をもたらす「白髪の引き金」を、並べているのだと考えられます。

 

 

次の文章は、

「加齢とともに頭髪や全身諸所の毛が白くなる傾向がある(老人性白髪)。」

加齢は、ユーメラニンを減少させる「引き金」になり得る、ということです。ユーメラニンが枯渇してしまえば、白髪になります。

 

生まれたときからの白髪

次の文章は、

「先天性白毛は、先天性白皮症(⇒ 眼皮膚白皮症)、早老症候群(ウェルナー症候群、ロスムント・トムソン症候群、ワールデンブルグ症候群などでみられる。」

この部分は、別の記事ですべて解読しています。詳しくは、以下のリンクからご覧になってください。
⇒ 白髪の原因と遺伝の解明!医学大辞典「先天性白毛」の全文を解読する

 

先天性白皮症

色素メラニンの材料となるチロシン(タンパク質の一種)に、変化をうながすのがチロシナーゼという酵素です。

どんなに材料チロシンがあっても、変化するためには酵素チロシナーゼが必要。チロシナーゼがなくなるか、あるとしても働かなくなってしまえば反応は起こりません。

白蛇・白虎など、白皮症の原因がチロシナーゼにあることは、すでに判明しています。

 

早老症候群

老化の進行が極端に早くなる症状は「早老症」と呼ばれ、ウェルナー症候群、ロスムント・トムソン症候群、ワールデンブルグ症候群はその代表的な例です。

いずれも遺伝子によるものですが、具体的な仕組みは明らかになっていません。

 

ウェルナー症候群は、20歳代から白髪・脱毛・白内障などの老化現象が進みます。日本の患者数は約2,000名で、なんと世界の患者さんの約6割は日本人だそうです。

 

 

ロスムント・トムソン症候群は、幼児期から皮膚の症状(しなびる等)や白内障などが現れます。医学大辞典に、白髪に関する情報はありませんでした。

 

ワールデンブルグ症候群は、特に虹彩(注)の色に特徴(青白い)があります。前髪の一部に、白髪が見られるようです。

(注)虹彩:ひとみの周りにある、ドーナツ型の部分。目に入る光の量を調整する。明るい時はしぼんで、暗い時は広がる。

 

病気(1)

次の文章は、

「後天性限局性白毛は、尋常性白斑、円形脱毛症の再生期、フォークト・小柳・原田病などに合併する。」

 

病気による白髪はすべて、別の記事で詳しく解説しています。以下のリンクからご覧になってください。
⇒ 白髪の原因と対策(後天性)まとめ~病院の何科で治療すれば治るのか!

 

「後天性」は先天性の逆だからよいとして、「限局性」はふだん使わない言葉です。限局とは、せまく限られていること。

白髪には、あたまの一部分だけが白髪になる(境界線がはっきりしている)「限局性白毛」と、あたま全体または全身が白髪になる「汎発性白毛」があり、ここでは前者となります。

 

尋常性白斑は、肌にできる白い斑点のことで、単に白斑とよばれることも。

皮膚の色が白く抜けている部分は、色素細胞(メラノサイト)がはたらいていませんから、頭髪も白くなります。

 

円形脱毛症はご存知だと思いますが、治療の途中で頭髪が生えるときに、白髪となることもあるようです。治療によって毛母細胞が活動を始めても、色素細胞(メラノサイト)の活動が始まっていない場合もあるからでしょう。

重い円形脱毛症の原因はストレスでなく、自己免疫疾患であることが、近年になって確定的になったようです。

ストレスと白髪の関係は、別の記事で詳しく解説しています。以下のリンクからご覧になってください。
⇒ 白髪の原因はストレスでない!30代40代の男性と女性には共通点が

 

免疫というのは、通常は自分を守るため、外敵に対しておこなうものです。

ところが、何らかの理由で、自分の細胞に対して攻撃を加えるようになってしまったのが、自己免疫疾患です。攻撃が色素細胞におこなわれると、ユーメラニンを作ることができなくなって白髪になります。

 

 

フォークト・小柳・原田病も、今のところ、色素細胞に対する自己免疫疾患だろうといわれています。ユーメラニンが多い目や耳などにも、症状があらわれるようです。

 

病気(2)

次の文章は、

「また、ビタミンB12欠乏症、吸収不全症候群、内分泌障害などの衰弱性疾患、クロロキンなどの薬剤、神経疾患、精神的ショックにも続発する。」

 

ビタミンB12欠乏症は、重い貧血が特徴的なもので、自己免疫疾患といわれています。

吸収不全症候群は、栄養の消化・吸収のはたらきがおとろえるもの、内分泌障害はホルモン分泌のバランスがくずれるものです。

これらの衰弱性疾患(体のはたらきが弱まる病気)に伴って、白髪が生えることもあると記述されています。

 

クロロキン(炎症を抑える薬)も掲載されていますが、白髪に関する情報は非常に少ないです。このあたりまでくると、もはや命にかかわるレベルです。

さらに、神経疾患(脳、脊髄、筋肉などの神経に起きる病気)、精神的ショックと続きます。

 

精神的ショックは、記述されている位置が最後ですから、命にかかわるほどのショックです。

ストレスなどという、なまやさしいものではありません。それほどのショックが続けば、さすがに白髪も生えるのでしょうが、もはや白髪レベルをはるかに超えた問題でしょう。

 

若白髪

最後の文章は、

「なお、基礎疾患のない若白髪は男性に多く、優性遺伝性である。」

 

ナント、超大切なことが、最後の最後に書いてあります。こんなにたいへんなことを、あっさりと。若白髪の謎を解くカギ「優性遺伝性」が、見つかってしまいました。

若白髪については、全3回シリーズで特集を組んでいます。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
⇒ 白髪の原因は遺伝?若い男性(10代で若白髪の男)の研究結果とは!

 

これで医学大辞典による白髪の解説は終わりです。これまで「黒色のユーメラニン」の経路を追いかけてきましたが、色素細胞(メラノサイト)をつくるのは誰なのか、それが最後のテーマとして残っています。

 

白髪の原因とメカニズム~色素幹細胞

なぜ「最後のテーマ」といえるのか、それは話がすでに細胞のレベルになっているから。白髪の原因とメカニズム、いよいよ最終コーナーまで来た感じです。

 

秀潤社が発行する「細胞工学」。2013年9月22日に発行された第32巻 第10号に掲載されている、「色素幹細胞とそのニッチ:毛包幹細胞の新しい役割」(松村寛行・毛利泰彰・西村 栄美 著)という記事を見てみましょう。

この10数年ほどで「毛髪の科学」が進展したのは、細胞や分子・遺伝子のレベルで研究が進んでいるからだということが、よく分かります。結論から言うと、色素細胞(メラノサイト)を作るのは、色素幹細胞です。

 

出展:細胞工学 2013年
第32巻 第10号 表紙

 

出展:細胞工学 2013年 第32巻 第10号 1039ページ
(赤丸は当サイトによる)

 

幹細胞という言葉は最近かなり有名になったので、言葉だけならご存知のかたも多いと思います。

 

人間の体を構成する細胞には寿命があって、寿命の長さは細胞の種類によって異なります。

「例えば血液細胞の1つである赤血球は、120日ほどで寿命を迎えるので、骨髄の幹細胞が1分間に数億個の補給をしています。(出展:Wikipedia「細胞」)」

 

このように細胞の寿命にともなって、新たな細胞を補給し続けるところが幹細胞です。細胞の源といえるでしょう。

ノーベル生理学・医学賞を受賞した、山中教授のiPS細胞(人工多能性幹細胞)は、人間の皮膚などの細胞を幹細胞に変化させたものです。

 

iPS細胞の画期的なことは、体のどのような種類の細胞でも作り出せる事。再生医療と呼ばれますが、例えば最終的に臓器を作ることができれば、臓器移植は不要になります。

しかも、自分の皮膚から作られた臓器であれば、免疫による拒絶反応もおこりません。

 

細胞の種類によって幹細胞も異なり、色素細胞(メラノサイト)の源は色素幹細胞、毛母細胞(毛髪を作る細胞)の源は毛包幹細胞です。

 

白髪の原因とメカニズム~毛包幹細胞

じつは、この記事に驚くべきことが書かれています。まさに「白髪の原因とメカニズム」の根幹にかかわることです。

色素幹細胞が色素細胞(メラノサイト)を供給しているという所まではよいとして、色素幹細胞が活性化するためのシグナルを、毛包幹細胞が発しているというのです。

 

 

具体的には、毛包幹細胞が発する「TGF-βシグナル」によって、色素幹細胞の活性化を促すそうです。

さらに、毛包幹細胞と色素幹細胞という2種類の異なる幹細胞の相互作用システムを維持するためには、17型コラーゲンというタンパク質が必須であることが判明した、と書いてあります。

ただし、17型コラーゲンを摂取しても、色素幹細胞は活性化しません。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
⇒ 白髪の原因と加齢の関係が判明!男女に共通のコラーゲンシステムとは

 

逆にいうと、17型コラーゲンが不足すれば、2種類の幹細胞による相互維持システムが破たんして、白髪や脱毛が発症するということです。

ちなみに、これらの研究内容は、2011年に報告されたものです。2002年に、西村教授が色素幹細胞の存在を初めて報告してから、9年経過しています。

 

日本皮膚科学会雑誌 2011年 第13号 臨時増刊号 特別講演 「毛包幹細胞による色素幹細胞の維持制御と白髪・脱毛」西村栄美(東京医科歯科大学教授)

 

さらに2016年2月には、加齢とともに毛包幹細胞が寿命を終えていくまでのメカニズムまで発表され、米科学誌サイエンスにも掲載されました。

白髪の4つの原因のうち、「色素細胞(メラノサイト)の減少」と「老化」との因果関係は、解明されたと言えるでしょう。

 

年を取っても白髪にならない人は、「17型コラーゲン」が枯渇しないからです。西村教授の研究チームは近い将来に、17型コラーゲンの枯渇を遅らせる方法を発見することでしょう。

2002年に、西村教授が初めて色素幹細胞の存在を発見してから、2016年に老化メカニズムを発表するまでの軌跡を追いました。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
白髪の原因は遺伝子の異変?加齢と幹細胞の老化メカニズムついに解明

 

白髪の原因とメカニズム~まとめ

「黒色の色素(ユーメラニン)」が毛髪に運ばれなくなると、黒髪は白髪になります。白髪の原因は、以下の4つのうちどれか(または複数)です。「原因1」と「老化」のメカニズムは、解明されたといえます。

「毛髪の科学」は近年急速に進展しており、メカニズムの解明にともなって黒髪を取り戻す日がくるかもしれません。

 

【白髪の原因1】
黒色の色素(ユーメラニン)を作り出している色素細胞(メラノサイト)が減った、またはなくなった。

【白髪の原因2】
色素細胞(メラノサイト)の中で実際に黒色の色素(ユーメラニン)を作るメラノソームが減った、またはなくなった。

【白髪の原因3】
メラノソームの中で、黒色の色素(ユーメラニン)が作られなくなってしまった。

【白髪の原因4】
メラノソームの中で黒色の色素(ユーメラニン)は作られたが、その色素が毛髪まで運ばれなくなってしまった。

 

黒字部分の出展:FRAGRANCE JOURNAL 2014年3月 30ページ
カラー部分の出展:細胞工学 2013年 第32巻 第10号 1039ページ
(赤字部分は当サイトによるものです)

 

 

メラニンに異常をもたらす「引き金」と白髪
  • 加齢による老人性白髪
  • 遺伝子による先天的な白髪
  • 優性遺伝による若白髪
  • 遺伝子によらない白髪

 

遺伝子によらない白髪
  • 皮膚の色が白く抜ける白斑に発生する白髪
  • 円形脱毛症が回復する際に発生する白髪
  • フォークト・小柳・原田病によって発生する白髪
  • ビタミンB12欠乏症、吸収不全症候群、内分泌障害などの衰弱性疾患によって発生する白髪
  • クロロキンなどの薬剤を使用することによって発生する白髪
  • 神経疾患(脳、脊髄、筋肉などの神経に起きる病気)、精神的ショックによって発生する白髪

 

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