白髪の原因

白髪の原因は遺伝?若い男性(10代で若白髪の男)の研究結果とは!

2018/11/23

 

財団法人 遺伝学普及会(設立は、1947年5月23日)が編集して、理工系専門書を出版している株式会社 エヌ・ティー・エスから発行されている「遺伝」という雑誌があります。

この雑誌は当初、「北隆館」というところが発行していました。遺伝学普及会の設立4年目となる1951年(昭和26年)の7月号に、読者の研究として「私の家族に現れた白髪について」という題名の記事が投稿されました。

 

出展:遺伝 1951年 7月号 表紙

 

筆者は三上参次という人で、投稿した時は20才(10代から若白髪)。この記事を書いているのは2018年なので、ご存命であれば87才のはずです。

ちなみに「三上参次」という名前の日本史学者がいましたが、1939年に亡くなっているし髪は黒々としていました。ですから、現在のところ「三上参次」さんの消息は不明です。

 

白髪の原因と遺伝~10代男性による若白髪の家系図

若い20才の男性(10代から若白髪)が、半世紀以上も前に問いかけた謎(白髪の原因と遺伝の関係)、真正面から向き合ってみます。

当サイトが最大限に尊重する「南山堂 医学大辞典」が日本で初めて発行されたのは1954年ですから、1951年に研究投稿した男性にとっては完全に暗中模索の状態だったでしょう。

 

20才の彼は、10代(14才)の頃から白髪が生え始めたそうです。

研究投稿を執筆している時には黒髪が頭の前だけで、頭頂部から後頭部にかけては真白という状況でした。

 

彼は白髪と遺伝との関係をひもとくため、親類縁者を訪問して毛髪の状況を調べあげ、若白髪家系図を作成しました。その調査結果を、以下に引用します。

 

出展:遺伝 1951年 7月号 40ページ(赤丸は当サイトによる

 

この図が非常にまぎらわしいので、よくよく注意をしながら見る必要があります。四角は男性で、丸は女性です。

それは良いとして、黒塗りは白髪で白(黒塗りなし)が黒髪なのです。逆にしてほしかったですね。このあたりがシロウトっぽいところ、と言っては先輩に対して失礼でしょうか。

 

クエスチョンマークは不明(当人に会えなかったか、まわりの人に聞いても覚えていなかった)、三角はすでに死亡していることを示しています。

 

白髪の原因と遺伝~10代男性による若白髪の家系図を読む (1)

10代男性が残してくれた貴重なてがかりである、若白髪の家系図。白髪の原因と遺伝の関係を解明するため、順に読みとっていきましょう。

 

出展:遺伝 1951年 7月号 40ページ(赤丸は当サイトによる

 

縦のI~Vは世代を示します。Ⅳが投稿者の世代で、投稿者は「Ⅳ13、赤丸部分」です。

 

Ⅳ10とⅣ11はお兄さんで、ともに白髪だったことになります。お兄さんは2人とも20代で戦死したそうですが、かなり目立つほどの白髪だったようです。

3人のお姉さん(Ⅳ8、Ⅳ9、Ⅳ12)と1人の妹(Ⅳ14、すでに亡くなっている)は35才・30才・23才・14才(10代)で、白髪はまったくなかったとか。

 

1つ上の世代を見ると、投稿者のお父さん(Ⅲ8)は58才で頭一面真白でした。お母さん(Ⅲ7)は47才で病死したものの、白髪はまったくなかったそうです。

お姉さん(Ⅳ8)には子供が6人いて(V8~V13)、2人は亡くなっているものの白髪はなし。お姉さんの夫(Ⅳ7)は黒髪ですが、夫の父親を含めた3兄弟は全員白髪です。

 

 

白髪の原因と遺伝~10代男性による若白髪の家系図を読む (2)

白髪の原因は、遺伝なのか。若白髪の家系図(10代男性による)を、さらに見ていきましょう。

 

出展:遺伝 1951年 7月号 40ページ(赤丸は当サイトによる

 

お父さん(Ⅲ8)の妹(Ⅲ9)は、20代から白くて55才の現在は真白とのこと。

4人の子供達(Ⅳ15~Ⅳ18)のうち、35才で死亡した長男(Ⅳ15)は20代から白髪だったそうです。その弟(Ⅳ16、17)は既に戦死していて、白髪はまったくなかった。

 

長女「Ⅳ18」は18才ながら白髪で、母(Ⅲ9)とともに毎月染めています。お父さん(Ⅲ10)は50代で病死したものの、白髪はまったくなかったとのことです。

A家系で白髪なのはすべて男性で、女性にはまったく白髪がありません。いっぽうB家系では男性にも女性にも白髪があります。

 

 

お父さん(Ⅲ8)の長兄(Ⅲ2、異母)は20代から白くて、老衰で死亡したときには真っ白だったそうです。

その子供Ⅳ1は若い時から白髪があり、53才現在で真っ白。でもその子供達(V1~V7)にはまったく白髪がみられません。

 

お父さん(Ⅲ8)の次兄(Ⅲ4、異母)も、若くして白髪で今は真っ白。その子供達(Ⅳ4・Ⅳ5)は45・17才で白髪はありません。次兄(Ⅲ4)の妻(Ⅲ3)は真っ黒でした。

投稿者の結論は、「白髪の有無が1対1の比に出ているので、先人のいう如く遺伝をしているのではないかと考えられる。」となっています。

 

ていねいに調べ上げたわりに、あっさりとした結論です。正直、わけがわからなくなったのではないでしょうか。頭の中は、「はてなマーク」だらけのご様子。

 

結論に書かれているように、昔から白髪の原因として遺伝の要素が大きいと言われてきました。肌の色が遺伝するのだから、髪の色も遺伝するだろうというのは自然な発想です。

投稿者は初めから先入観を持って、調査を開始したのではないかと思われます。

 

白髪の原因と遺伝~10代男性による若白髪の家系図を読む (3)

白髪の原因を解明しようとした、10代男性。若白髪の家系図を作ったところまでは良かったのですが、遺伝に関する知識は乏しかったようです。

隔世遺伝という考え方もありますから、もっと多くの世代を調査しなければならないところでしょう。

 

そもそも遺伝の仕組みとはどのようなものなのか、血液型を例にして簡単に復習してみます。

 

よく知られている「遺伝子」という言葉ですが、血液型の場合、遺伝子は「A」「B」「O」の3種類。

お父さんから1つ、お母さんから1つもらい、2つの遺伝子の組み合わせで血液型が決まるわけです。

 

遺伝子には、「優性遺伝子」と「劣性遺伝子」とがあります。

その遺伝子を1つでも持っていれば遺伝子の特性が現れる場合は優性、2つとも持ち合わせて初めて現れる場合は劣性です。

 

血液型の場合は「A」と「B」が優性で、「O」は劣性。「AB」はAB型、「AA」「AO」はA型、「BB」「BO」はB型、「OO」はO型。

「O型」というのは、お父さんからもお母さんからも「O」をもらった場合にだけなる血液型なのです。

 

 

例えば、お父さんがA型(AA)でお母さんがB型(BB)だったとします(上図左)。

それぞれ1つづつもらうのですから、子どもが保有する遺伝子の組み合わせは「AB」しかありません。子供の血液型は「AB型」のみです。

 

お父さんがA型(AO)で、お母さんがB型(BO)だとどうでしょうか(上図中)。

子どもが保有する遺伝子の組み合わせは、「AB」「AO」「BO」「OO」の4通りとなります。つまり子供の血液型は、「AB型」「A型」「B型」「O型」の全てについて可能性があるというわけです。

 

お父さんがA型(AO)でお母さんもA型(AO)であれば(上図右)、子どもが保有する遺伝子の組み合わせは「AA」「AO」「OO」の3通り。

子供の血液型は、「A型」か「O型」です。他の組み合わせでも同じように考えていけば、すべてのパターンで血液型を特定することができます。

 

話を研究投稿にもどして先ほどの若白髪家系図を見ると、白髪の原因が老化でない(18才のⅣ18さん)ことは明らかです。

若白髪の人や、年を取って白髪にならない人もいるのですから、「老化」は白髪の原因といえません。

 

とはいえ、黒髪と白髪が「1:1」だから原因は遺伝、という投稿者の結論は乱暴にもほどがある(失礼)。

何としても、真相をつきとめなければなりません。

 

昭和26年の驚くべき時代背景!

半世紀以上も前に、10代で若白髪の男性が奮闘した様子は、今も昔もさほど変わらない姿ではないでしょうか。

ところで、当時と現在に驚くべき変化が2つあることに気がつきましたか?

 

1つ目は、「戦死」という言葉が普通に登場することです。例えば投稿者(Ⅳ13)の兄弟3人のうち、2人は「20代で戦死した」となっています。

またⅣ15・Ⅳ16・Ⅳ17の3兄弟のうち、2人(Ⅳ16・Ⅳ17)は戦死です。

 

投稿記事は戦後6年目に書かれており、戦争の傷跡が露骨に残っているのです。

ちなみに、第二次世界大戦による日本軍の戦死および不明者の数は230万人、民間人の死亡者数は80万人、当時の人口は約7260万人だそうです(厚生労働省)。

あらためて、ご冥福をお祈りします。

 

2つ目は、「病死」という言葉も普通に登場することです。例えば投稿者のお母さんは、47才で病死。お姉さんの子ども6人のうち、2人は亡くなっています。

頭髪は生命に直接関係ないので、医学的には頭髪研究の優先順位が低かったのでしょう。

 

話題がそれてしまいましたが、続く2回で半世紀前に封印された謎解きにチャレンジします。

「若白髪の謎に挑戦【毛髪の科学】全3回シリーズ」の第2回目は、以下のリンクからご覧ください。
⇒ 若白髪の意味?なぜ多い~遺伝を家系図で分析した10代の男がいた!

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