白髪の原因

白髪の原因とメカニズム解明!紫外線とメラニンの関係やチロシンとは

2018/11/23

 

1969年に玉川大学農学部が発行した、「玉川大学農学部研究報告 第9号」。この中に、「頭髪に関する研究(第1報) ~白髪のProline欠除とその因子について~」という論文が掲載されています。執筆者は、青柳茂雄・水沢裕子・日吉マリ子さんの3名です。

現在閲覧することができるものの中で、題名に「白髪」という言葉が入っている最も古い資料、半世紀も前に提出された論文といえます。

 

出展:玉川大学農学部研究報告
第9号 表紙

 

論文の冒頭は、「1 緒言」という序文から始まります。わずか5行の中の1文に書かれているのは、「また、頭髪の色は Melanine によることも知られている。」という文章。

黒髪のもとがメラニンであると、当たり前のように書いています。少なくとも半世紀前にはすでに、メラニンが黒髪の主役であることは常識だったのです。

 

そもそもメラニンとは何のために存在し、どこでどのようにして作られるのか。

黒髪と白髪を分けるキーワード、メラニンを掘りさげます。

 

この記事は、「毛髪の科学(全4回シリーズ)」の第2回目です。色素を詳しく解説した第1回目は、以下のリンクからご覧ください。
⇒ 白髪の原因とメカニズム解明!メラニン色素で黒髪に見える理由とは?

 

白髪の原因とメカニズム~メラニンとは

「白髪の原因とメカニズム」の中心的な存在ともいえる色素メラニン、半世紀前から常識のように知られる存在です。

この記事では、「毛髪の科学」から得られるメラニンの姿を浮きぼりにします。

 

メラニン(メラニン色素ともいう)は、動植物を含めてあらゆる生物が保有する物質です。人の髪や肌だけでなく、鳥の羽やイカ墨などにも含まれます。

1億6000万年前の化石化したイカの墨袋からもメラニンが確認されていますから、始めから生物の体の一部みたいなものです。

 

前回の記事で説明したように、毛髪の色は「黒色のユーメラニン」と、「黄色のフェオメラニン」という2種類ある色素の配合によって決まります。

いっぽうで、肌の色を決める要素はメラニン以外にもあり、このあたりから話を進めることとします。

 

 

「メラニン」は、スキンケアに興味がある人にとって、広く知られた言葉といえます。

「お肌の大敵」というのがメラニンのイメージでしょうが、読み進めるうちに「かけがえのない存在」であることを理解していただけるはずです。

 

白髪の原因とメカニズム~肌の色とメラニン

肌の美白を追求することと、白髪を改善して黒髪にすることは、メカニズム的に真逆となります。メラニンは肌を黒くする原因となるため、肌にとってはむしろ敵だからです。

ただし、先ほども少しふれたように、肌の色はメラニンだけで決定するのではありません。毛髪との違いを見てみます。

 

人体の表面が、皮膚(肌)でおおわれているのはご存知のとおり。皮膚はもっとも外側にある表皮と、表皮の内側にある真皮とで構成されます。

チョコっと傷を負ったときの表皮の傷と、深い傷を負って真皮に達した時とでは、なんとなく様子が違いますね。

 

肌の色を決定する最大の要素は、表皮に存在する黒色(メラニン)です。次に肌の色を決定する要素として、赤色(血液)があります。

真皮には毛細血管があり血液が流れていますから、表皮を通してうっすらと赤色が透けて見えているのです。

 

緊張している時には血管が縮んで血流が少なくなるため、赤色が減っていわゆる「顔面蒼白」状態に見えます。

お酒を飲むと血管が広がり血流が多くなるため、赤色が増えて顔が赤くなるわけです。

 

 

次に肌の色を決定する要素は、真皮の色。たとえばミカンを多く食べると、肌の色が黄色っぽくなります。ミカンに多く含まれるビタミンCは無色透明ですから、黄色とは関係ありません。

黄色いのはβ-カロテンで、ミカンを多く食べると、真皮に含まれるβ-カロテンの量が一時的に多くなるため、肌が黄色っぽく見えるのです。

 

表皮にメラニンが少ない人は、透けて見える真皮の色合いによって肌の色も異なってきます。

この点が、毛髪の色と肌の色を決定する要素の、大きな違いでしょう。

 

白髪の原因とメカニズム~メラニンと紫外線

あらゆる生物が保有する物質メラニン。そもそもメラニンは、何のために存在するのでしょうか。白髪の原因とメカニズムを超えて、命に直接かかわるような意味が、じつは紫外線との関係にあります。

 

生物にとって日光は、「命の恵み」でもあり「危険な光」でもあります。「命の恵み」という側面は、植物が光合成をおこなうためのエネルギーが日光だということ。地球上の酸素は全て、植物の光合成で作られます。

「危険な光」という意味は、日光に含まれる紫外線がDNA(遺伝子)の破壊や皮膚癌につながるということです。生物にとって紫外線は、非常に危険な光なのです。

 

 

前回の記事で説明したように、2種類のメラニンのうち「黒色のユーメラニン」は光をすべて吸収します。もちろん紫外線も。

ですから、体の表面をユーメラニンでおおってしまえば、ユーメラニンが紫外線を吸収するため、紫外線が体内の細胞に及ぶことがなくなります。

 

ユーメラニンが紫外線を吸収するから人体が守られる、という仕組みは非常に重要です。

ユーメラニンが紫外線を反射するのではありません。吸収するのです。

 

紫外線が体内に侵入することを防ぐことができれば、DNA(細胞の「核」の中にある遺伝子)の破壊および皮膚癌から、人体を守ることも可能ということ。

要するに「黒色のユーメラニン」は、紫外線から人体を守るために、人体みずからが作っている物質です。

 

メラニンは敵ではなく、生物の守護神なのであります。

実際ユーメラニンの多い人種は、皮膚癌の発生率が少ないことが分かっているようです(出展:小学館 家庭医学館)。

 

白髪の原因とメカニズム~医学大辞典のメラニン

白髪の原因とメカニズムを知るために、医学・医療の業界で最も定評があると言われる「南山堂 医学大辞典」で、メラニンを調べてみます。

日本人の手で国内において初めて作成された総合的な医学専門辞典で、60年以上にわたって業界関係者から広く信頼を得ているものです。

 

出展:南山堂 医学大辞典 表紙

 

最新版(第20版)の序文を、以下に添付します。

 

出展:南山堂 医学大辞典 序文

 

白髪の原因とメカニズム~メラニンとチロシン

この辞典でメラニンを引くと、白髪の原因とメカニズムを知るための新たなキーワード、「チロシン」という言葉が登場します。

 

専門家が使用する辞典なので簡単ではありませんが、ここは非常に大事な部分なので、辞典の内容に沿って理解を深めていきましょう。

医学大辞典の「2419ページ」に掲載されているのが、以下の「メラニン」です。

 

出展:南山堂 医学大辞典 2419ページ

 

この部分について、1文ずつ内容を意訳していきます。

 

まず始めに、

微生物からヒトまで全生物界に存在する生体色素で、哺乳類ではチロシンからDOPA、ドーパキノンを経て生成されるインドール化合物の重合体である。」

と書かれています。いきなり強力です。

 

重合体というのは、鎖または網のようにつながってできるものの事。つまりメラニンは、インドール化合物がつながってできたものだということになります。

インドールという物質を調べてみると、じつは知る人ぞ知る超有名なものだということが分かります。大便の臭い成分に含まれている物質だからです。

 

単に大便だけなら有名になるはずもありませんが、インドールが薄まると逆に花のような香りになって、オレンジやジャスミンなど多くの花の香りの成分でもあるのです。

それどころか、香水に使われる天然ジャスミン油にもインドールが含まれています(出展:Wikipedia「インドール」)。要するに、とても身近な物質でした。

 

話をメラニンに戻すと結局、メラニンは「インドールという大便や香水に含まれる成分」がつながってできたものだということです。

当サイトがこだわるユーメラニンは、チロシン → DOPA → ドーパキノン → ユーメラニンという経路をたどることが分かりました。

 

ちなみにフェオメラニンは、ドーパキノンから先は、ユーメラニンと違う経路で作られます。

 

 

つまり1文目には、

「メラニンは微生物からヒトまで全生物の体内に存在する色素で、哺乳類のメラニンはインドール(大便や香水に含まれる成分)が鎖のようにつながってできる。ユーメラニンは、チロシン → DOPA(ドーパ) → ドーパキノン → ユーメラニンという経路をたどって作られる。

と書かれています。

 

次の文章は、

「メラニンはメラノサイト(色素細胞)のみが合成可能で、メラノソームといわれるリソソームと類似する膜小器官の中で合成される。」

です。

 

膜小器官とは要するに、「うすい膜でおおわれた、1つの機能をになう小さな器官」という意味。リソソームの機能は、当サイトのテーマと関係ないので置いておきます。

 

つまり2文目には、

メラノサイト(色素細胞)のみがメラニンを作ることができて、メラニン自体はメラノソームと呼ばれるうすい膜でおおわれた小さな器官の中で作られる。

と書かれています。

 

メラノサイト(色素細胞)とメラノソームについては、次回に詳しく説明します。

 

白髪の原因とメカニズム~メラニンと黒髪・紫外線

いよいよ、「白髪の原因とメカニズム」の中心となる部分になってきました。メラニンと黒髪・金髪の関係、メラニンと紫外線の関係に移っていきます。

 

次の文章は、

メラニンは、ヒトでは黒色のユーメラニンと黄色のフェオメラニンが存在し、この2種類のメラニンがさまざまな比率で混合されて、ヒトの毛髪や皮膚色を決定づける。

です。

 

これまでの知識があれば、簡単に理解できる文章です。実はこの文章には、大事な部分があります。「黒色のユーメラニンと黄色のフェオメラニン」と、書かれているのです。

メラニンの色として、さまざまな表現があります。今後は「医学大辞典」を最大限に尊重して、黒色のユーメラニンと黄色のフェオメラニンで完全に統一することにします。

 

次の文章は金髪ではほとんどがフェオメラニンで、黒髪はユーメラニンが主体となる。で、これは完璧に理解できます。

前回の記事では「金髪」の理解に時間がかかりましたが、これなら単純明快です。

 

最後の文章は、

「ユーメラニンは紫外線および紫外線により生じたフリーラジカルを吸収することで細胞を保護しているが、フェオメラニンは紫外線によりフリーラジカルが発生し、それがDNAを損傷することで光発癌の原因になると考えられている。」

です。

 

 

フリーラジカルは相手の細胞から電子を奪い取って、「さびつき」を引き起こします。フリーラジカルの代表例は、活性酸素。

つまりユーメラニンは「紫外線」と「紫外線によって生じたフリーラジカル」を吸収して、細胞を「さびつき(DNAの損傷による光発癌)」から守っていることになります。

 

光発癌の「原因」がフリーラジカル、と書いてあるところに注目してください。仕組みが解明されていれば、大辞典にも「原因」という言葉は使われるのです。

 

ユーメラニンに続く、フェオメラニンに関する文章は、正確に理解することができません。

フェオメラニンはフリーラジカルを吸収しないと言っているのか、フェオメラニンによってフリーラジカルが増すといっているのか、分からないからです。

 

少なくともユーメラニンは、DNAの損傷や光発癌から細胞を守っていることを、読み取ることができます。

 

白髪の原因とメカニズム~メラニンのまとめ

  • メラニンは微生物からヒトまで全生物の体内に存在する色素で、哺乳類のメラニンはインドール(大便や香水に含まれる成分)が鎖のようにつながってできる。ユーメラニンは、チロシン → DOPA(ドーパ) → ドーパキノン → ユーメラニンという経路をたどって作られる。
  • メラノサイト(色素細胞)のみがメラニンを作ることができて、メラニン自体はメラノソームと呼ばれるうすい膜でおおわれた小さな器官の中で作られる。
  • メラニンはヒトでは黒色のユーメラニンと黄色のフェオメラニンが存在し、この2種類のメラニンがさまざまな比率で混合されてヒトの毛髪や皮膚色を決定づける。
  • 金髪ではほとんどがフェオメラニンで、黒髪はユーメラニンが主体となる。
  • ユーメラニンは「紫外線」と「紫外線によって生じたフリーラジカル」を吸収して、細胞を「さびつき(DNAの損傷による光発癌)」から守っている。

 

続き(第3回目)では、メラニンを作る色素細胞(メラノサイト)を解説します。以下のリンクからご覧ください。
⇒ 白髪の原因とメカニズム解明!黒髪のもとメラニンを作る色素細胞とは

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