白髪の原因

生まれつきの白髪体質~医学大辞典「先天性白毛」の全文を解読する!

 

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2020/05/26

 

これまで多くの記事で、「南山堂 医学大辞典」を参考にしてきました。そのうち最も掲載したのは、当然「白毛(はくもう、白髪の医学用語)」です。

 

出典:南山堂 医学大辞典 1954ページ

 

専門用語が多くて難解なため、一般的には利用されることの少ない辞典です。当サイトは、白髪を「毛髪の科学」という視点から掘りさげるので、この辞典を参考にする機会が必然的に多くなります。

あまりに専門的すぎるかもしれませんが、すくなくとも「白毛」の解説は、完全に理解しておくべき部分です。

 

当記事は、4つに分類した「白毛」のうち、2つ目にあたる「先天性白毛(生まれつきの白髪体質)」を、すべて解読するものです。

先天性白毛には、4項目(先天性白皮症ウェルナー症候群ロスムント・トムソン症候群ワールデンブルグ症候群)が掲載されており、それぞれを医学大辞典で参照して、1文ずつ読み進めていきます。

 

できるだけ、原文を忠実に意訳していきますこと、ご承知おきください。

 

生まれつきの白髪体質~先天性白皮症(眼皮膚白皮症)

生まれつきの白髪体質、最初は「先天性白皮症(眼皮膚白皮症)」です。

 

出典:南山堂 医学大辞典 477ページ

 

メラニンの合成に関連する遺伝子の変異によって発症する、常染色体における劣性遺伝の疾患です。

(補足:遺伝子には、「性染色体」と「常染色体」があります。「性染色体」は雌雄を決めるためのもので、「常染色体」は雌雄で共通に観察される、「性染色体」以外のものとなります。)

生まれた時から、メラニン色素の合成障害による症状(全身の皮膚が白色、虹彩が青色~灰色、弱視、頭髪が白色~茶褐色など)が現れます。

 

日本人の場合は、数万人に1人と言われています。

従来は、チロシナーゼ(酵素の名前)の働きがあるかないかによって分類されていましたが、現在では原因となる19種類の遺伝子別に分類されます。

 

メラニン色素の合成障害による症状のみである非症候型(全身に症状が現れないもの)として6種類(チロシナーゼ遺伝子、P遺伝子、チロシナーゼ関連タンパク1遺伝子、SL C45A2遺伝子、C10ORF11遺伝子、SL C24A 5遺伝子)、症候型(全身に症状が現れるもの)として13種類の原因遺伝子が報告されています。

 

原因となる遺伝子が同じでも、症状が多彩(生涯ほとんどメラニンを合成しない症例から、健常の人とほとんど同じレベルまでメラニンを合成する症例まで)で、しかも異なるタイプでも症状が重なるため、症状だけから原因の遺伝子を特定するのは困難です。

病気のタイプを分類するためには、遺伝子診断が必須となります。

 

症候型(全身に症状が現れるもの)には、ヘルマンスキー・パドラック症候群、チェディアック・東症候群、グリセリ症候群が含まれており、頻度は非症候型(全身に症状が現れないもの)の約10分の1程度です。

(補足:文中に出てくる各症候群は、病気タイプの名前です。)

 

メラニンの合成が減少することによる症状の他に、ヘルマンスキー・パドラック症候群の場合は出血の傾向、チェディアック・東症候群の場合は好中球性免疫不全、グリセリ症候群の場合は神経障害や免疫異常を併発します。

(補足:好中球は白血球の1種類で、カラダに侵入してきた細菌などを殺菌して、感染を防ぎます。好中球が減ると、感染症にかかりやすくなります。)

 

生まれつきの白髪体質~早老症候群

生まれつきの白髪体質、早老症候群として掲載されているのは2項目です。

それぞれの項目を、医学大辞典で参照して、読み進めていきます。

 

ウェルナー症候群

早老症候群の最初は、「ウェルナー症候群」です。

 

出典:南山堂 医学大辞典 185・186ページ

 

1904年にWerner が「強皮症を併発した白内障」を報告して、1934年には同じような特徴がある疾患を独立の症候群として、「ウェルナー症候群(WRN)」と命名されました。

現在までに、世界中で約1,200例報告されている中で、日本での報告が80%を超えています。

常染色体における劣性遺伝の疾患で、日本の症例では、「近親婚」とくに「いとこ婚」による患者の例が多くなります。

 

ウェルナー症候群の原因遺伝子(WRN遺伝子)は、OMIM(Online Mendelian Inheritance in Man)番号604611(OMIMは、オンライン化されたヒト遺伝病のデータベースです)。

1996 年にウェルナー症候群の原因遺伝子が、RecQ型DNAヘリカーゼ(RecQ proteinllke 2;RECQL2)タンパク質を、コードすることが明らかにされました。

(補足:細胞が正常に分裂するためには、遺伝子の2重らせん構造を、いったんほどく必要があります。このほどく機能を、ヘリカーゼという酵素が行います。

RecQ型DNAヘリカーゼとは、大腸菌からヒトまで広く保有する酵素で、WRN ヘリカーゼはその1種です。ウェルナー症候群は、WRN ヘリカーゼ遺伝子の変異によって、WRN ヘリカーゼが機能しなくなることが原因である、という意味になります。)

 

ウェルナー症候群の原因となる、WRN遺伝子のmRNA は約5.8kb の大きさで、ほとんどすべての組織で働きます。

(補足:遺伝情報は、いったんmRNAに転写され、転写情報にもとづいてタンパク質が合成されます。kbはキロベースと読み、この場合は5800個の化合物が並んでいる、という意味になります。)

 

これまでに報告されている、WRN遺伝子の変異は85種類あって、ヘリカーゼモチーフを含む、さまざまな部分に変異が存在します。

(補足:遺伝子の中で、1つの機能を特徴づける配列パターンのことを、モチーフと呼びます。)

 

WRN ヘリカーゼ遺伝子の変異によって、WRN ヘリカーゼが機能しなくなり、正常なタンパク質を作る機能を失ってしまうことが、ウェルナー症候群の発症原因であると、考えられています。

発症年齢は21~58 歳で、一般的に低身長、20歳頃から白髪、頭髪が抜ける、とがった鼻、小さな口(鳥のような顔bird-like face) 、声帯が萎縮するため声が高くなるなど。

 

体幹の皮下脂肪は多いものの、四肢は細く、四肢末端の皮下脂肪は減少して、皮膚が硬くなり、足の底が硬くなり、ひざから足首までに潰瘍ができます。

若年性白内障や、性腺機能の低下が認められます。甲状腺癌や髄膜腫などを、発症する頻度が高くなります。

 

X線検査をすると、アキレス腱の石灰化、両手両足の先端部分に骨粗髪症が認められます。

患者の平均死亡年齢は47 歳前後で、心筋梗塞、悪性腫瘍、脳血管障害が主な死因です。

 

(C.W.Otto Wernerはドイツの医師、1879年~1936年)

 

ロスムント・トムソン症候群

早老症候群の次は、「ロスムント・トムソン症候群」です。

 

出典:南山堂 医学大辞典 2615ページ

 

1868年にRothmundがBavarian村で、成長遅延・白内障を伴った多形皮膚萎縮を示す10 人の子どもたちを報告し、1936年にThomsonが、同様に成長遅延・骨欠損を伴った、多形皮膚萎縮を示す患者を報告したことに始まるものです。

常染色体における劣性遺伝疾患で、光線により悪化する顔面の紅斑や水庖が生じて、色素斑・毛細血管拡張を伴う多形皮膚萎縮となります。

 

皮膚症状以外にも、発達遅滞・低身長・白内障・悪性腫蕩(有棘細胞癌、骨肉腫など)の合併が認められます。

原因遺伝子は、大腸菌のヘリカーゼRecQのホモログである、RECQL4です。

(補足:ホモログとは、同じ祖先から派生した遺伝子のことです。)

 

RTS(ロスムント・トムソン症候群)は、RECQL4に突然変異のないI型と、突然変異を認めるII型に分けられます。両方の型で多形皮膚萎縮、発達遅延、低身長などの症状は共通していますが、白内障はI型のみで、骨肉腫はII型のみで認められます。

RECQL4が、ヒトでヘリカーゼとして機能しているかどうかは不明ですが、DNA複製の初期段階ならびに転写やDNA修復に、関与しているのではないかと考えられています。

RTS が、なぜ光線過敏症状を示すのか、よくわかっていませんが、紫外線によるDNA損傷の修復に、障害がある例も存在します。

 

(August von  Rothmundはドイツの眼科医、1830 - 1906 ; Matthew Sydney Thomson はイギリスの皮膚科医、1894 - 1969)

 

生まれつきの白髪体質~ワールデンブルグ症候群

生まれつきの白髪体質、最後は「ワールデンブルグ症候群」です。

 

出典:南山堂 医学大辞典 2626・2627ページ

 

白髪(前髪の一部)、左右の光彩の色が異なる、白斑、色素沈着などの色素異常、感音性難聴を、主な症状とする遺伝性の疾患です。

(補足:耳の器官は、大きく外耳・中耳・内耳にわかれ、外耳・中耳は音を内耳に送り、内耳は音を電気信号に変えて脳に送ります。難聴は、伝音性難聴と感音性難聴に分かれ、伝音性難聴は外耳・中耳の障害で、感音性難聴は内耳の障害です。)

 

臨床症状の違いから、I、ll a、llb,、Ⅲ、Ⅳ型の5 型に分けられます。

内眼角解離(左右の目の間隔が広い)をともなう、常染色体における優性遺伝であるI 型が多く、同じ家系の中でも現れ方の違いが大きい疾患です。

 

生命にかかわる障害は少なく、難聴に対する教育支援が必要です。

発症の頻度は約3万人に1人で、先天性感音性難聴者の1~3 %にみられます。

 

疾患の原因は、神経堤細胞移動の移動障害と考えられています。

(補足:神経堤細胞は、体中に分散して自律神経系や頭蓋骨など多くの組織を作り出す細胞です。)

 

常染色体における優性遺伝である、I 型とⅢ型はPAX3 (遺伝子座2q35) の異常、lla型 はMITF (mi転写因子)の異常、llb型とllc型は原因不明、lld型はSNA12(8q11)の異常によります。

(補足:人間の体細胞には、22対44本の常染色体があります。この中で、遺伝子がどの染色体のどの位置にあるのかが決まっていて、その位置のことを遺伝子座と呼びます。)

 

Ⅲ型は、I型より臨床症状が多いクライン・ワールデンブルグ症候群で、I 型症状に加えて低身長、骨関節症状をともないます。

Ⅳ型は、遺伝子EDN3 (20q13)、EDNRB (13q22)またはSOX10(22q13)の異常で、これらの遺伝子の変異で発症するのは、ヒルシュスプルング病のみです。ホモ接合体の場合は、難聴をともないませんが、発育障害をもつシャー・ワールデンブルグ症候群となります。

(補足:ヒルシュスプルング病は、腸のはたらきを制御する細胞が生まれつき無いために、重い便秘や腸閉塞を起こす病気です。遺伝子に「A」と「a」がある場合に、「AA」や「aa」が遺伝された場合を、「ホモ接合体」と呼びます。)

 

(Petrus Johannes Waardenburgはオランダの眼科医、1886年~1979年、Krishnakumar N. Shahはインドの小児科医)

 

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