白髪染めの放置時間を自分流にアレンジするのはトラブルのもとですよ!
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2020/05/27
病院で受診して薬を処方してもらった時は、袋に用法(1日に何回か、1回の用量、など)が書かれていて、それを守る人がほとんどでしょう。
ところが、医薬部外品や化粧品になると、あまり使用説明書を読まずに、自分流に使用法をアレンジする場合も多いようです。
医薬品よりも効き目がゆるやかだから、大丈夫と思われるかもしれませんが、薬剤によっては用法を守らないと思わぬ事態になりかねません。
じっさい、白髪染め製品にはトラブルが多く、「ジアミン系」という言葉などは多くの人がご存知でしょう。
「よく染めるには、放置時間を長く」と考えるのは自然かもしれませんが、勝手な思いこみで、安全性を軽く考えないでいただきたいものです。
「日本ヘアカラー工業会」(白髪染め製品の製造元による組織)のホームページには、放置時間(step4)について、次のように掲載されています。
- step1:混合液をつくる
- step2:混合液を塗る
- step3:髪全体になじませる
- step4:放置する
- step5:すすぎ
- step6:シャンプー、リンス
出典: 日本ヘアカラー工業会
ここで、注目すべきは、白髪染めやカラートリートメントなど、製品によって放置時間に関する別々の記述はないということです。
どの製品も単純に、「 使用説明書に従う」ことが、製造者の望むところなのです。従ったとしても、発疹、発赤、はれ、かゆみ、皮膚異常、じんま疹、息苦しさ、めまいなどが、起こり得るのですから。
当記事では、白髪染め製品について、放置時間を使用説明書よりも長くした場合の影響を整理しました。
結論だけ先に述べると、白髪染めとカラートリートメントは裏ワザなどに頼らず、使用説明書の内容を守るのがベスト、ということになりますので、今後の参考にしてください。
目次
白髪染めと放置時間
冒頭で述べたように、白髪染めの放置時間は、利用者が自由にアレンジするようには製造されていません。薬剤というのは、用法をまもるのが原則です。
では、それを守らなければどうなるのか、というのが当記事のテーマとなります。白髪染め製品の分類は、日本ヘアカラー協会(全国の美容院による組織)が提供する内容を参考にしました。
出典: 新ヘアカラー入門
(日本ヘアカラー協会)
白髪染めは染料で白髪を染める製品ですが、白髪の内部まで染料を浸透させるものと、白髪の表面を染料で包みこむものがあり、この違いに注意しながら以降の内容を読み進めてください。
出典:化学同人発行
放射光が拓く化学の現在と未来
なお、白髪染め関連製品の成分について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
⇒ 白髪染めトリートメント~ヘアカラーの成分と頭皮トラブルに要注意!
白髪染め
2剤方式の白髪染めが発明されたのは1883年、すでに世界中で100年以上もの実績があります。 特徴は強力な染毛力、一回でよく染まり、色持ちも良い(1~3ケ月)です。
いっぽう、髪や頭皮のダメージが大きく、いわゆるジアミン系染料の副作用として有名ですが、ダメージを与えるのは染料のみでなく、他に配合される薬剤の影響も大きくなります。
具体的に、成分表を見ながら、薬剤の役割と放置時間の関係を整理していきましょう。
出典:ケンコーコム
(赤線は当サイト)
白髪を染める仕組み
1剤と2剤を混ぜて、薬剤の化学反応によって髪を脱色し、白髪の内部から着色します。配合される薬剤は、それぞれ次のような役割です。
【1剤のアルカリ剤(強アンモニア水)】
キューティクルを開くことによって、薬剤を白髪の中まで浸透させます。
【1剤のアルカリ剤と、2剤の過酸化水素】
2種類の薬剤が化学反応して発生した酸素が、メラニン色素を分解して、髪を脱色します。
【1剤の酸化染毛剤】
白髪の内部に浸透した酸化染毛剤(パラアミノフェノール、パラフェニレンジアミン)が、酸素と反応して、脱色された白髪の内部で発色します。
出典:新ヘアカラー入門
薬剤によるダメージ
「新ヘア・サイエンス」(日本毛髪科学協会)を参考にして、白髪染めの薬剤による影響を整理すると、次のようになります。
出典:新ヘア・サイエンス 表紙
【頭皮のダメージ】
アルカリ剤(1剤)と過酸化水素(2剤)による一次刺激性皮膚炎、および酸化染毛剤(1剤)によるアレルギー性皮膚炎のおそれがあります。
【髪のダメージ】
アルカリ剤(1剤)と過酸化水素(2剤)で発生する酸素は、メラニン色素だけでなく、髪の成分であるたんぱく質を分解する作用があります。
さらに、アルカリ剤(1剤)のアンモニアは「皮膚・眼への刺激」、過酸化水素(2剤)は「発がん性」があります(出典:厚生労働省)。
放置時間を長くした場合の影響
白髪染めの放置時間について、コーセーは次のような説明をしています。
使用説明書に記載されている放置時間は、薬剤の発色に適切な時間であるため、放置時間を長くしても染毛効果はほとんど変わらないし、むしろダメージが進むので危険だということです。
出典:コーセー
以上から、放置時間を使用説明書より長くするのは、明らかに無謀な行為といえるでしょう。
カラートリートメント
白髪染めよりも放置時間が短く、毎日手軽に使いながら、少しづつ色が定着していく製品です。 「無添加」「天然由来の成分」などをアピールするものが多いのですが、白髪を染めるのは化学染料です。
以下に示したように、各製品とも具体的には、複数の「HC染料」および「塩基性染料」を使用しています。
出典:ケンコーコム
(赤字は当サイト)
出典:ケンコーコム
(赤字は当サイト)
出典:マイナチュレ
白髪を染める仕組み
HC染料および塩基性染料は、白髪の内部にまで深く浸透するものではなく、白髪の表面を包みこむものです。
塩基性染料は電気的な性質を利用しており、白髪の表面を電気的にマイナス(-)の状態にしたうえで、塩基性染料(電気的にプラス(+)の性質を持つ)が髪の表面と結合する仕組みです(下図)。
HC染料は、直接染料として白髪の表面を塗るようなイメージとなります。
出典:新ヘアカラー入門
薬剤によるダメージ
白髪の表面を包みこむ染料ですから、髪へのダメージはほとんどないと考えて良いでしょう。
いっぽう、頭皮へのダメージについては、「HC染料および塩基性染料には、パラフェニレンジアミンよりもアレルギーを引きおこすおそれが高いものもある」とレポートされています(出典:東京都健康安全研究センター)。
たとえば、3製品に共通して使用されている「HC 青2」「HC 黄4」「塩基性 青99」は、レポートでリスクの高い染料として指摘されたものです。
カラートリートメントのリスクについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
⇒ 白髪染めトリートメント~ノンジアミンも染料リスクはジアミンと同じ!
放置時間を長くした場合の影響
カラートリートメントの放置時間を、長くした場合の影響について、メーカーからの情報は見当たりません。そもそも、化学染料で染めていること自体が、製品イメージに反するからでしょう。
薬剤のダメージから考えて、放置時間を長くすることは、白髪染めと同様に無謀な行為といえるでしょう。
ボタニカルカラー(草木染め)
ボタニカルカラー(草木染め) の白髪染めとして、人類の歴史が安全性と有効性を証明しているのは、「ミソハギ科の植物 ヘナ(ヘンナ)」によるヘナカラーでしょう。
ヘナカラー(ヘナ白髪染め)の全体像については、以下の記事を参考にしてください。
⇒ ヘナカラー(ヘナ白髪染め)~数千年の時を重ね脈々と受け継がれる伝説
さまざまな成分の混ざった製品が世界中に流通していますが、「天然100%のナチュラル・ヘナカラー」であれば、染料のヘナ(ヘンナ)と色味調整用のハーブ類のみで、化学物質はまったく含まれていません。
出典:ピア
(赤字は当サイト)
白髪を染める仕組み
ヘナの葉は、「ローソン(Lawsone)」と呼ばれる色素を含んでいて、髪の毛の成分(たんぱく質)と反応して結合する性質を持つため、天然の白髪染めとして利用できます。
さらに、繊維質がキューティクルのすきまから入りこんで、髪の毛の表面をなめらかな状態に整えるため、髪のトリートメント剤としても活用されてきました。
薬剤によるダメージ
そもそも、化学物質の薬剤が含まれていないので、薬剤によるダメージはありません。
「植物アレルギー」の有無を、パッチテストで確認してから使用すれば、リスクは完全にゼロです。
放置時間を長くした場合の影響
放置時間を長くした場合の影響は、長いほどむしろ効果が上がって良くなるとさえいえます。
使用説明書にも、「放置時間は、〇〇分以上」と書かれているほどです。
白髪染めと放置時間~まとめ
白髪染めの放置時間について、もっとも大事なことは、配合されている薬剤の性質を知ることでしょう。
とくに、HC染料と塩基性染料は新しい染料ですから、体への影響は未知といえます。
それでも、ジアミン系と同等以上のリスクを指摘するレポートがあるのですから、軽く見ていると思わぬ事態になりかねません。
じっさい、カラートリートメントでも多くのトラブルが発生しており、その原因は化学染料にあると考えられます。
リスクを承知して使用するにしても、製品の説明書に書かれている内容には従うべきでしょう。
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