白髪染め

白髪染めの発明と生活文化史~明治から昭和と課題は頭皮の刺激だった

 

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2020/05/27

 

2015年5月に株式会社ネオテクノロジーが発行した、「発明に見る 日本の生活文化史 化粧品シリーズ 第2巻 ヘアケア」。

 

出典:日本の生活文化史 表紙

 

「必要は発明の母」という言葉があるように、時代とともに課題が生まれ、人は課題を乗り越えるために技術を生んで、経済が発展し、生活は向上してきました。

この図書は、身の回りにある生活道具の、具体的な発明による工夫を通じて、生活文化を読み取ろうとしたものです。

 

時代とともに技術が進んでいくほど、特許の分類も細分化していきます。特許分類の数は、特許制度が始まった、明治18年から20年代後半までは、35分類です。

そして、明治30年代から40年代は136分類、大正10年には207分類と加速しました。

 

この図書では、明治初期から第二次世界大戦前までの発明を取り上げていますが、当記事ではその中から、白髪染めに関するものをピックアップしてみます。

西欧列強に飲み込まれまいと、近代化にまい進した日本。身近な生活道具の発明を通じて、百年前の日本人の暮らしに、タイムスリップしてみましょう。

 

白髪染めの歴史

過酸化水素が1818年、酸化染毛剤のパラフェニレンジアミンが1863年に発見され、それらの組み合わせによる白髪染め(ヘアカラー)の特許は、1883年にフランスで取得されました。

これが、現在の白髪染め(ヘアカラー)の原型です。酸化染料のパラフェニレンジアミンは、もともと色はありませんが、酸化することによって発色します。

 

日本では明治時代の中頃まで、「お歯黒(おはぐろ)式」(タンニン剤と鉄分による)の白髪染めで、仕上がりに10時間を要しました。初めて酸化染料を使用した白髪染め(商品名は「志ら毛染君が代」)が発売されたのは、明治38年(1905年)です。

当時は、パラフェニレンジアミンのアルカリ溶液を頭髪に塗ったまま、約2時間かけて空気で酸化することで、白髪染めをしていました。それでも「お歯黒式」の10時間に比べると、絶大なる時短です。

 

 

明治44年(1911年)、パラフェニレンジアミンを過酸化水素で酸化する商品(商品名は「るり羽」)が、山発商店(現 シュワルツコフ ヘンケル)から発売され、白髪染めに要する時間が30分ほど短縮されます。

さらに、大正10年(1921年)には、水野甘苦堂(現 ホーユー)から「元禄」が発売されて、白髪染めの時間は一気に30分へと短縮されました。

 

昭和30年(1955年)代には、白髪染めに加えて、おしゃれ染めの開発が進み、昭和40年(1965年)代には自宅用が、昭和60年(1985年)代には美容室を中心に、酸性染毛料(ヘアマニキュア)が人気を集めます。

1990年代からは、若年層を中心にした茶髪ブームをきっかけとして、年齢や性別に関係なく、カラーリングはファッションの一部となりました。

 

長きにわたり、日本人にとって、黒髪は美人の条件。明治の頃、明るい地毛は、女性にとって「くせ毛」と同様に悩みだったそうで、白髪染めするなら黒色でした。

例えば、明治に取得された発明として、「葡萄(ぶどう)の蔓(つる)を焼いた木炭の粉末」と、無水ラノリンと硫化油を混ぜて椿油と練り合わせた、「黒香油」という白髪染めもあったようです。

 

白髪染めに関する発明~明治末頃から大正初め

この図書には、明治末頃から大正初めにかけて、特許を取得した2例の白髪染めが、掲載されています。

パラフェニレンジアミンの有毒性は、すでに認識されており、頭皮に対する刺激が強いことに伴う、湿疹やかぶれが課題でした。

 

1つ目の特許第23765号(特許取得は大正2年)は、「芳香族ヂアミン(現 ジアミン)を、アルカリ性にして、ブドウ糖を加えて、白髪染めを製造する方法」です。

発明の目的として、「芳香族ヂアミン(現 ジアミン)の、頭皮を刺激する性状を消失させて、有効な白髪染めを製造することができる。」と記述されています。ポイントはブドウ糖を加える点にあるようです。

 

出典:日本の生活文化史 24ページ
(赤字は当サイトによる)

 

ただし、「芳香族ヂアミン(現 ジアミン)としては、アミノジフェニールアミン、または、トルイレンヂアミン、または、パラフェニレンジアミン」と記述されています。

アミノジフェニールアミンとは、次のような成分です。

 

発がん性のため、産業的利用は行われなくなった。かつては染料の合成中間体として、あるいは硫酸塩の検出試薬として使われていた。(出典:Wikipedia「4-アミノビフェニル」)

 

「染料の合成中間体」とは、もともと色がなく、酸化すると発色する染料のこと。髪を染めるのも、もはや命がけです。

 

2つ目の特許第23782号(特許取得は大正2年)は、「パラフェニレンダイアミン(現 パラフェニレンジアミン)を、亜硝酸ソーダと塩酸で処理して、タンニン酸水溶液を加えて沈殿したものを、濾過水洗して製造する白髪染め剤」です。

発明の目的として、「過酸化水素などの、酸化剤とともに白髪染めに用い、容易に純黒に染毛する。頭皮を刺激することなく、安全有効な毛染剤を得ることができる。」と記述されています。

 

出典:日本の生活文化史 26ページ
(赤字は当サイトによる)

 

この特許には、明確に過酸化水素が登場しており、発明の性質にも「容易に純黒に染毛」と明記されているので、「白髪染めの時間を短縮する先がけ」といえるでしょう。

 

商品パッケージに、「無添加」「自然素材」「ジアミン系不使用」と書かれていても、安全安心とはかぎりません。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
⇒ 白髪染めトリートメント~ヘアカラーの成分と頭皮トラブルに要注意!

 

白髪染めに関する発明~昭和

昭和に入ると、ぞくぞくと特許が出願されます。この図書では、4事例の白髪染めが掲載されているので、順に見てみます。

1つ目の特許第76788号(特許取得は昭和3年)は、「パラフェニーレンヂアミンと硫酸、亜硫酸、リン酸、鉄、銀、マンガン、可溶性デンプンを混ぜて作る錠剤と、過硼酸ソーダまたは過酸炭酸ソーダと、可溶性デンプンを混ぜて作る錠剤からなる、白髪染め料」です。

発明の目的として、「長い月日が経過しても、変質の恐れがなく、染色力は強大で、頭皮を刺激しない、優良な白髪染め染料を得ることができる。」と記述されています。

 

出典:日本の生活文化史 56ページ
(赤字は当サイトによる)

 

2つ目の特許第79257号(特許取得昭和3年)は、「パラフェニーレンヂアミンと、タンニン酸と、甘薯澱粉(サツマイモのデンプン)と、馬鈴薯澱粉(じゃがいものデンプン)を混ぜて粉末にする。使用する際は、粉末に適量の水を加えて熱し、いったん冷却してから、適量の過酸化水素水を加えて、糊状にして使う白髪染め剤」です。

発明の目的として、「毛髪の質を害さず、自然な黒色に染色でき、頭皮に付着しても害なく、容易に染液を除去することができる。」と記述されています。

 

出典:日本の生活文化史 62ページ
(赤字は当サイトによる)

 

3つ目の特許第114035号(特許取得昭和11年)は、「パラフェニーレンヂアミン、酸性亜硫酸ナトリウム、パラフォルムアルデヒート、焼明礬(やきみょうばん)、除蟲菊(じょちゅうぎく)粉末、可溶性の糊、過硼酸ナトリウム、炭酸マグネシウムからなる白髪染め剤」です。

発明の目的として、「酸化によって頭皮を刺激または障害することなく、毛髪を硬化する憂いのない、安全な白髪染め剤を得ることができる。」と記述されています。

 

出典:日本の生活文化史 106ページ
(赤字は当サイトによる)

 

4つ目の特許第115061号(特許取得昭和11年)は、「第1剤(パラアミドヂフェニールアミンまたはアミドフェノール、可溶性澱粉のアラビアゴム・デキストリン、クエン酸または酒石酸)と第2剤(過酸化亜鉛、可溶性澱粉)と第3剤(過酸化水素、希塩酸または酢酸、酒精)を混ぜて使用する白髪染め剤」です。

発明の目的として、「頭皮を刺激せず、無害な白髪染め剤を、容易に提供することができる。」と記述されています。

 

出典:日本の生活文化史 108ページ
(赤字は当サイトによる)

 

以上のように、日本では黒髪の需要が絶えることはなく、「頭皮への刺激」「髪の損傷」という課題を抱えながら、さまざまな白髪染めの発明が生まれてきました。

いっぽうで、「パラフェニーレンジアミン(酸化染毛剤の主役となる染料)」には、

 

外見は白色固体だが、空気に触れると、酸化して暗色に変化する。主に、エンジニアリングプラスチックの原料として用いられるほか、染髪にも利用される。毒物及び劇物取締法により、劇物に指定されている。(出典:Wikipedia「p-フェニレンジアミン」)

 

という性質があることに、変わりはありません。

「白髪染めは命を削る」とまで、言うつもりはありませんが、白髪染めに含まれている成分には、くれぐれも注意を向けていただきたいものです。

 

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