白髪染めトリートメントは低刺激で傷まない?その驚くべき真相とは!
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2020/05/27
ある情報に接したとき、その情報の発信者は誰なのか、身元が明確で信頼のおける人かどうかを最初に確認したいところです。
ところが、多くの場合その点は不明ですから、次に確認すべきは情報の根拠。それが分かれば、根拠の妥当性を考えて、その情報を受け入れるかどうか判断できるからです。
たとえば、「白髪染めトリートメントの成分は、安全と言われています。」という一文に接したとき、少なくとも次の2点が記述されていなければ、もはやそれは「情報」でさえありません。
- 誰が安全だと言っているのか。
- 何を根拠に安全と言っているのか。
日常生活で、自分のカラダに直接つけるのですから、その程度の確認はすべきでしょう。
道ばたで見知らぬ人が、何かを差し出しながら「安全だから、塗ってごらん。」と言っても、塗りませんよね。
危険をあおるつもりはありませんが、当サイトの結論を先に述べますと、多くの白髪染めトリートメントは決して安全とは言えません。
とても危険なものと比べて、「それよりマシな気がしますけど・・・(汗)」と言っているだけです。
ところが、「とても危険なものと同じくらいリスクがある」というのが真相だとしたら、どうしますか?
すべて根拠とともに掲載しますから、ご自身で判断してくださいね。
目次
白髪染めトリートメントは低刺激で傷まない?
以下の白髪染めトリートメント、低刺激で傷まないような気がしますよね。
なぜ、そのような気がするのか、キーワードの並べ方にポイントがあります。
自然素材、無添加、それに続いてカラダに悪そうな成分を全く使用していないことが強調されています。
特に、白髪染めとしては有名になった「ジアミン系色素」を使用していないから、安心感が増すことに。じっさいは、以下の染料で髪を染めているのです。
出典:サスティ
(赤線が染料)
(青下線は合成界面活性剤)
逆にいうと、それほどまでに「ジアミン系」の影響を実感する人が多いということでしょう。
まずは、「ジアミン系」とはどのような成分なのかを復習してから、上にあげた成分の影響を掘りさげていくことにします。
出展:放射光が拓く化学の現在と未来
白髪染めの成分については、「白髪染めトリートメント~ヘアカラーの成分と頭皮トラブルに要注意!」で根拠を示しながら徹底的に整理していますので、合わせてご覧ください。
無添加やオーガニックの意義については、「白髪染めトリートメントに無添加オーガニックは何の価値もありません!」で掘りさげました。
白髪染め、おしゃれ染め、ヘアカラー
全体を暗めに染める「白髪染め」から、明るめに染める「おしゃれ染め」まで、色のラインナップが多彩なヘアカラー製品。1剤と2剤を混ぜて使用するものです。
1剤には酸化染毛剤とアルカリ剤が、2剤には過酸化水素が含まれています。
出典:新ヘアカラー入門
その仕組みは、次のようなものです。
- 1剤と2剤を混ぜて黒髪に塗ると、アルカリ剤で髪が膨張して、キューティクルが開く。その隙間から、薬剤は髪の内部にまで深く浸透。
- 過酸化水素とアルカリ剤が反応して発生した酸素が、黒髪のもとであるメラニン色素を分解し、黒髪は脱色される。
- 髪の内部で、酸化染毛剤が酸素と反応して発色。染料の分子が大きくなって、髪の中に定着する。
髪を染める成分
消費者庁が警告したのは酸化染毛剤の成分で、具体的にはパラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、メタアミノフェノール、の3つです。
厚生労働省が提供する情報には、それぞれ次のように記載されています。
【パラフェニレンジアミン】
【パラアミノフェノール】
【メタアミノフェノール】
以上3つの出典:厚生労働省
職場の安全サイト
世界的に長い歴史のある染料で、症例も多いことから、酸化染毛剤の危険性は多くの人に知られるようになったと言えるでしょう。
いっぽう、新たな染料が次々に登場するなかで、「ジアミン系不使用」という言葉が安全性の代名詞かのようになった感があります。
髪への影響
髪を染める仕組みから考えただけでも、髪が傷むことは容易に想像できますね。
酸素はメラニン色素を分解するほどの力を持ちますから、髪のおもな成分であるケラチン(たんぱく質)も損傷します。
出典:新ヘア・サイエンス
明るい色に染めるためには、強く脱色する必要があるため、過酸化水素の濃度を濃くして損傷も大きくなることに。
傷ついた髪は修復しませんから、繰り返すたびに影響が蓄積していくわけです。
頭皮への影響
染毛剤による頭皮などの接触皮膚炎には、一時刺激性皮膚炎とアレルギー性皮膚炎の2種類あります。
白髪染めに配合される成分と、皮膚炎との関係を以下に示しました。
- 一時刺激性皮膚炎:1剤のアルカリ剤と2剤の過酸化水素
- アレルギー性皮膚炎:1剤の酸化染毛剤
アレルギー性皮膚炎というのは薬剤の量とは関係なく、アレルギー反応が成立してしまえば起こりますから、使用前のパッチテストで確認するしか防ぐ方法はありません。
酸化染毛剤がいかに強力かを確認したので、次は当記事の本題である、白髪染めトリートメントの成分へと移っていきます。
白髪染めトリートメント
製品が多彩で呼び名もさまざまなため、当記事では、日本ヘアカラー協会(JHCA)が編集した「新ヘアカラー入門」に従うこととします。
下表の「カラートリートメント」(赤い囲み)が、当記事で「白髪染めトリートメント」と呼んでいる部分です。
出典:新ヘアカラー入門
白髪染めトリートメントに配合される染料は、「酸性染料(タール色素)」「塩基性染料」「HC染料」の3種類、ということになります。
それぞれについて、どのような成分なのか掘りさげていきましょう。
酸性染料(タール色素)
酸性染料(タール色素)は、電気的な性質を利用して、染料を髪の表面に付着させるものです。
- 白髪染めトリートメントを髪に塗ると、髪の表面が電気的にプラス(+)の状態になる。
- 酸性染料(タール色素)はマイナス(-)の性質を持つため、染料が髪の表面に付着する。
出典:新ヘアカラー入門
酸性染料(タール色素)の有害性については、ある意味ではすでに有名といえるかもしれません。
たとえば、Wikipediaにも次のような内容が掲載されています。「発がん性などの発見により、食品添加物の指定が取り消された」と記述されています。
出典:Wikipedia「タール色素」
HC染料
HC染料(HCは、「ヘアカラー」の意味)は、電気的な性質を持たずに髪の表面に付着する、直接染料です。
2006年10月に日光ケミカルズ(化粧品原料の製造メーカー)が発行した「新 化粧品ハンドブック」には、次のような説明があります。
出典:新 化粧品ハンドブック 表紙
出典:新 化粧品ハンドブック 349ページ
赤下線を引いた部分から、3つの事実が判明します。
- 分子が小さく、髪の内部にまで浸透しやすい。
- ニトロアミノフェノール系の色素
- ニトロフェニレンジアミン系の色素
分子が小さいということは、「キューティクルの隙間から入りこんで、コルテックスの一部にまで浸透する」というメリットがあり、多くの白髪染めトリートメントに配合されている理由が理解できます。
外形的な性質が分かったところで、次は「ニトロアミノフェノール系」「ニトロフェニレンジアミン系」の色素が持つ性質へと移っていきましょう。
環境省「化学物質情報検索システム」には「2-ニトロ-4-アミノフェノール(毛染め剤)」(CAS番号:119-34-6)という化学物質が掲載されています。CAS番号とは、アメリカ化学会による化合物番号で、化学物質を特定するためのものです。
出典:環境省「化学物質情報検索システム」
このCAS番号で探していくと、東京化成工業(医薬品や化学品などの原料メーカー)が掲載している「4-Amino-2-nitrophenol(CAS番号:119-34-6)」という化学物質にたどりつきます。少し名前の順番が異なりますが、CAS番号が同じなので同一の物質であると考えられます。
出典:東京化成工業
ここに記述されているように、「皮膚刺激」「重篤な目の損傷」を引き起こす可能性がある危険な物質であることが分かります。
次は、ニトロフェニレンジアミンです。この物質は「毛髪の染料」として厚生労働省のサイトにも掲載されており、「アレルギー性皮膚炎を起こすおそれ」「生殖能または胎児への悪影響のおそれの疑い」のある「警告」物質であることが分かります。
出典:厚生労働省
塩基性染料
塩基性染料は、電気的な性質を利用して染料を髪の表面に付着させるもので、酸性染料(タール色素)とは電気的性質が逆のものと考えてください。
- 白髪染めトリートメントを髪に塗ると、髪の表面が電気的にマイナス(-)の状態になる。
- 塩基性染料はプラス(+)の性質を持つため、染料が髪の表面に付着する。
出典:新ヘアカラー入門
塩基性染料に関する個別の安全性情報は見当たらないのですが、じつは驚くべき情報が、さりげなく存在しています。
東京都健康安全研究センターによる、「毛髪用化粧品に配合される新規染毛用色素の分析法」(2005年の年報)という論文。
2001年の「化粧品等に関する規制緩和」で、塩基性染料やHC染料を化粧品に配合することが可能になり、その後しばらく経過してから書かれたものです。
出典:東京都健康安全研究センター
出典:同 121ページ
上のページには、次の2点が述べられています。
染毛用色素として使用される色素の中には、強いアレルギー性を持つことで知られるp-フェニレンジアミン(PPD)と同程度以上の感作能を有するものもあることが報告されており、
今回検討した色素では、2ANP、4ANP、BB99、BB17、HB2、HR3、HY2、HY4及びHY5は、PPDより強い感作能を有するとされている。
この論文が参照している「Contact Dermatitis」は、アレルギー性および刺激性タイプの接触性皮膚炎に関する、臨床医のための情報サイト(有料)です。
感作能とは、アレルギーを引き起こす能力のことで、「パラフェニレンジアミンよりも強い感作能を有する可能性がある物質」の例としてあげられているのは、以下となります。
【塩基性染料】(カッコ内は、論文での略称)
塩基性 青99(BB99)、塩基性 茶17(BB17)
【HC染料】(カッコ内は、論文での略称)
2-amino-3-nitrophenol(2ANP)
4-amino-3-nitrophenol(4ANP)
HC 青2(HB2)、HC 赤3(HR3)、HC 黄2(HY2)、HC 黄4(HY4)、HC 黄5(HY5)
論文で、たまたま1例としてあげられた成分ですが、「HC 青2」「HC 黄4」「塩基性 青99」は、最初に取りあげた白髪染めトリートメントに実際に配合されているものです。
出典:サスティ
(赤線が染料)
(青下線は合成界面活性剤)
白髪染めトリートメントは低刺激?
これまでの情報を見る限りでは、白髪染めトリートメントの染料は頭皮に対して低刺激どころか、パラフェニレンジアミンと同程度以上の刺激を与える可能性があります。
白髪染めトリートメントは傷まない?
2剤方式の白髪染めに比べれば、白髪染めトリートメントの染料は髪の成分を破壊するものではありませんから、髪そのものは傷まないと考えられます。
さいごに
美容院でトリートメントすると、髪に潤いが増してキレイになったと錯覚してしまうので、じつは問題があることに気がつかなかったりするわけです。
髪の潤いは、頭皮から出る脂分と汗によって作られる皮脂膜(保護膜)で保たれます。
人工的にトリートメントで脂分を与えてしまうと、頭皮は脂分の分泌を止めるため、かえって乾燥肌や乾燥毛が進んでしまうのです。
化学染料やトリートメント剤など、化学物質で目先の対応をしても、ダメージは蓄積するばかりで、結果的に美髪にはつながりません。
あの製品より低刺激とか、この薬剤よりダメージが少ないとか、そんな基準で右往左往しても、遅かれ早かれ同じ結果にたどり着くだけでしょう。
要するに、頭皮を育てるという本質的な部分に、取り組むかどうかです。
【発表】
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