白髪染め

白髪染めトリートメント~自宅で染める市販タイプと美容院の比較結果

 

2016年3月1日に新美容出版が発行した、「新ヘアカラー入門」。NPO法人 日本ヘアカラー協会(JHCA)による編集です。

 

出典:新ヘアカラー入門 表紙

 

この図書は美容師向けのものとして、白髪染め(ヘアカラーやカラートリートメント)の種類を、もれなく取りあげるものです。

どのような種類があって、注意すべきことは何なのか、美容院で白髪染めするのと、自宅で染めるのでは、実際なにが違うのか、全てを整理してみます。

 

ちなみに、日本で初めて白髪染めをしたのは、平安時代の武将 斉藤実盛(さいとう さねもり、1111年~1183年)で、平家物語の巻第七に記述されているそうです。

敵方の大将が、討ち取った実盛の首を見ても、なかなか本人と確認できませんでした。近くの池で洗わせたところ、すぐに白髪になったので、実盛本人と判明したといいます。老兵と悟られないよう、墨汁で白髪染めしていたのです。

 

江戸時代末期には、色落ちしにくい「美玄香(びげんこう)」という白髪染めが、普及したそうです。

斉藤実盛を引きあいに出して、「今ならば実盛も買う美玄香」という川柳まで詠まれたそうですから、時代が変わっても世相に大差はないですね。

白髪染めトリートメントの用語解説

当記事では、白髪を染めるものをまとめて、「白髪染めトリートメント」と呼ぶことにします。まず最初に、以降の記事を理解しやすくするための、予備知識を整理しておきます。

 

【薬事法と薬機法】

薬事法(1960年、昭和35年に施工)は、2014年(平成26年)11月25日「薬事法等の一部を改正する法律」の施行にともなって、薬機法(「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の略称)に名称が変更されました。

 

【日本ヘアカラー工業会(JHCIA)と日本ヘアカラー協会(JHCA)】

日本ヘアカラー工業会(JHCIA)は、ヘアカラーの健全な発展を図るために、ヘアカラー商品のメーカーで構成する組織です。設立(1960年、昭和35年)当初は、「日本ヘヤダイ工業会」という名称でしたが、1970年(昭和45年)に「日本ヘアカラー工業会」に変更されました。

日本ヘアカラー協会(JHCA)は、サロン(美容室)の技術と知識の向上を図るために、全国のサロン(美容室)で構成されます。設立は、1996年(平成8年)です。

 

【白髪染め商品の分類】

日本ヘアカラー工業会(JHCIA)では、以下のように分類しています。

 

出典:日本ヘアカラー工業会(JHCIA)ホームページ

 

日本ヘアカラー協会(JHCA)編集の、「新ヘアカラー入門」では、以下のように分類しています。

 

出典:新ヘアカラー入門 8ページ

 

2015年12月19日に彩流社が発行した、「なっとく!のヘアカラー&ヘナ&美容室選び」(著者は美容師の森田 要さん、以下「同書」と呼ぶ)には、日本ヘアカラー協会(JHCA)の分類をベースにして、以下のような考え方を掲載しています。美容院の現場には、多彩な商品があふれていることが分かります。

 

出典:同書 31ページ

 

【ヘアダイについて】

英単語「dye: ダイ」の意味は、「染料」です。日本ヘアカラー工業会(JHCIA)設立当初の名称が、「日本ヘヤダイ工業会」であったことから分かるように、現在でも「ヘアダイ」という言葉が、広い意味で使われる場合もあります。

当サイトは、できるだけ混乱をまねかないようにするため、「ヘアダイ」という言葉を、広い意味で使用することはありません。

 

自宅で染める市販タイプと美容院の比較

美容院で白髪染めする「サロンカラー」と、自宅で染める市販タイプの「ホームカラー」は、基本的な成分としての違いはありません。

なぜならば、髪を脱色したり染めるために使用することができる成分は、薬機法および染毛剤製造販売承認基準で定められているからです。

 

美容院と自宅用の、違いは2つ。1つ目の違いは、操作性です。自宅で染める市販タイプは、自分で白髪染めすることが前提のため、使いやすさが重視されます。

そのため、薬剤の状態(クリーム状、泡状など)や、染める方法(1剤と2剤が同時に出るエアゾールタイプ、クシの部分から薬剤が出てコーミング感覚で染められる等)に、工夫がなされているわけです。

 

2つ目の違いは、色のラインナップ。自宅で染める市販タイプは、染めムラが出にくく、黒髪となじみの良い色調が多く、ナチュラルなブラウン系が色の中心になります。美容院のように、豊富な色のラインナップはありません。

自宅で染める市販タイプは、手軽に安価で染められるのが最大の魅力ですから、単純に明るいブラウン系にするとか、白髪を黒髪に染めるだけならば、成分さえ見誤らなければ美容院との違いは分からないでしょう。

 

 

美容院に対して求めることは、次のような点となります。

  • ヘアスタイルや雰囲気から、最も似合う色を選ぶ。
  • 頭髪のコンディションから、負担の少ない最適な薬剤を選ぶ。
  • 白髪を隠すのではなく、活かす方向でのデザイン。
  • 白髪が伸びても気にならないような、白髪染め(グレイカラー)。

 

自宅で染める市販タイプの白髪染めトリートメントを、美容院のプロが検証しています。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
⇒ 白髪染めトリートメント~自宅で染める市販タイプを美容院プロが検証

 

白髪染めトリートメントの分類

商品の呼び方が、時と場合によって、微妙に異なることがあります。ここでは、薬機法上での分類をベースにして、使用される染料によって、白髪染めトリートメントを分類整理しました。

以下の分類(掲載順は、種類、染料、持続期間)では、商品の通称も使用しています。実際に利用する際には、通称ではなくて配合されている成分で、判断するようにしてください。

 

白髪染めトリートメントは、単純に頭髪の表面だけを着色するものから、頭髪組織の内部にまで染料を浸透させるものまでさまざまです。

また、黒髪のメラニン色素を分解して脱色するブリーチ剤や、すでに染めた色素を分解して脱色する脱染剤も、染毛剤の仲間として区分されています。

 

【医薬部外品(薬機法上の分類)】

ヘアカラー、ヘアダイ(白髪染め、おしゃれ染めとも呼ぶ)
酸化染毛剤、1~3ヶ月

 

白髪染め
金属染毛剤、1~3ヶ月

 

ヘアブリーチ、ヘアライトナー
脱色剤・脱染剤、永久

 

【化粧品(薬機法上の分類)】

ヘアマニキュア、カラートリートメント
酸性染料(タール色素)、3~4週間

 

カラートリートメント
塩基性染料、2~3週間

 

カラートリートメント
HC染料、2~3週間

 

植物由来の天然染料
植物由来の天然染料、2~3週間

 

カラースプレー、カラーチョーク
タール色素・顔料、次回のシャンプーまで

 

頭髪の構造

染料ごとの特徴に入る前に、頭髪そのものの構造を知っておく必要があります。最も外側を「キューティクル」が覆っていて、その内側にあるのが「コルテックス」。染料が、どこまで浸透していくのか、注意してください。

 

出典:2014年1月30日 化学同人発行
放射光が拓く化学の現在と未来 127ページ

 

酸化染毛剤

白髪染めを含めて、頭髪を染める際に最も多く使用されているのが、酸化染毛剤です。染料およびアルカリ剤が含まれる1剤と、過酸化水素が含まれる2剤を混合して頭髪に塗ります。

染料としては、次のような複数の薬剤が配合されています。

  • 酸化染料中間体:もともと色はなく、酸素と触れて発色。
  • 直接染料(ニトロ染料):はじめから色を持っている染料。
  • カプラー(調色剤):色調に変化を与える。

 

出典:新ヘアカラー入門 10ページ

 

(1)1剤と2剤を混合して黒髪に塗ると、1剤に含まれるアルカリ剤によって、黒髪が膨張してキューティクルが開く。その隙間から、1剤の染料・アルカリ剤と、2剤の過酸化水素が、黒髪内部まで深く浸透する。

(2)過酸化水素は、アルカリ剤の働きで分解して酸素が発生し、メラニン色素を分解。酸化染料中間体は、過酸化水素が分解して生じた酸素と反応して、大きな分子となって色を発する

(3)大きな分子となった酸化染料中間体は、黒髪の内部に定着。メラニン色素が分解して、黒髪の明度が上がるため、染料の発色がより鮮明になる。

 

以上の方法で、メラニン色素を分解して、脱色しながら染料で着色するため、暗く染める「白髪染め」(グレイカラー)から明るく染める「おしゃれ染め」まで、豊富な色のラインナップを揃えることが可能です。

美容院では、過酸化水素の濃度によって、脱色の度合を変えることもできます。白髪の状態から染める場合は、脱色が不要ですから、着色力だけが求められることになります。

 

注意点は2つあり、1つ目は薬剤によるアレルギー反応を起こす場合があるので、毎回必ずパッチテスト(皮膚アレルギー試験)を行う必要があるということです。

2つ目は、過酸化水素によって、メラニン色素だけでなく、頭髪のケラチンタンパク質も分解してしまいます。これが頭髪を損傷する要因となりますので、使用に際しては、製品に記載されている「使用上の注意」を守らなければなりません。

 

金属染毛剤

「おはぐろ」と同じ原理による白髪染めで、1剤の「多価フェノール」という物質と、2剤の「金属塩」が反応して色を発する仕組みです。1剤を塗って15分以上放置してから2剤を塗り、さらに15分以上たったら洗い流します。

色が限られるので、白髪染め専用です。酸化染毛剤でかぶれる人でも、使用できる場合があります。

 

脱色剤・脱染剤

黒髪のメラニン色素を分解して明るくする脱色剤と、すでに染めた頭髪の染料を取って、別の色に変える際に用いる脱染剤があります。

 

出典:新ヘアカラー入門 11ページ

 

(1)1剤と2剤を混合して頭髪に塗ると、1剤に含まれるアルカリ剤によって頭髪が膨張して、キューティクルが開く。その隙間から、1剤のアルカリ剤と、2剤の過酸化水素が、頭髪内部まで深く浸透する。

(2)過酸化水素は、アルカリ剤の働きで分解して酸素が発生し、メラニン色素や染料を分解。1剤に過硫酸塩を混合して、2剤の過酸化水素を、さらに強く活性化させる商品もある。

(3)メラニン色素や染料が分解して、頭髪の明度が上がる。過酸化水素の濃度を高めたり、脱色をくり返すことによって、頭髪の明度をさらに上げることも可能。

 

酸性染料(タール染料)

 

出典:新ヘアカラー入門 11ページ

 

(1)頭髪に、ヘアマニキュアやカラートリートメントを塗ると、キューティクルの表面や隙間またはコルテックスの一部が、電気的にプラス(+)の状態になる。

(2)酸性染料(タール染料)は、電気的にマイナス(-)の性質を持つため、染料がキューティクルの表面や隙間またはコルテックスの一部と結合する。

(3)染料が、頭髪の内部にまで深く浸透しないので、頭髪の損傷やかぶれは少ない。いっぽう、汗や水などで色落ち・色移りしやすい。また、皮膚にも染まりやすいので、使用する際には、頭皮や肌につかないよう注意する必要がある。

 

塩基性染料

 

出典:新ヘアカラー入門 11ページ

 

(1)頭髪に、カラートリートメントを塗ると、頭髪の表面が電気的にマイナス(-)の状態になる。

(2)塩基性染料は、電気的にプラス(+)の性質を持つため、染料が頭髪の表面と結合する。

(3)塩基性染料のカラートリートメントは、酸性染料(タール染料)のヘアマニキュアよりも染まりが薄いため、2~3回ほど繰り返して、使用することをすすめる商品が多い。

 

HC染料

HC染料(HCは、「ヘアカラー」の意味)のカラートリートメントは、電気的な性質を持たず、直接染料としてコルテックスまで染料が浸透します。持続性は、酸性染料(タール染料)よりも短いですが、皮膚に付着しにくいという長所があります。

 

植物由来の天然染料

ヘナ(ヘンナ)、藍(あい)、あかねなどの、植物に含まれる色素で染色するものです。染料は、コルテックスまで浸透します。

 

タール色素、顔料

頭髪の表面に付着するのみで、洗えば流れ落ちます。

 

白髪染め全般の、成分とリスクを整理しました。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
⇒ 白髪染めトリートメント~ヘアカラーの成分と頭皮トラブルに要注意!

 

白髪染めトリートメントとパッチテスト

白髪染めトリートメントによるかぶれは、含まれる成分に対して、人間の体がアレルギー反応(免疫反応)を起こすことによって生じます。症状が認められた場合は、すぐに使用を止めて医師による診療を受けて下さい。

過去に異常がなくても、体質の変化からある日突然かぶれる場合もありますから、毎回必ずテストを行うことが重要。かぶれたことのある人が続けると、症状はひどくなり大変に危険です。

 

なお、当記事で紹介した図書には、ヘアカラー(酸化染毛剤)を使用する際のみ、パッチテストを行なうと記述されていますが、諸説あることに注意して下さい。

植物由来の天然染料による白髪染めでも、人によってはアレルギー反応を起こす場合があるので、パッチテストを毎回行なう必要があるという主張も存在します。

 

出典:新ヘアカラー入門 15ページ

 

白髪染めを行なう2日前(48時間前)に、次の手順で行ないます。

 

【手順1】
実際に使用する白髪染め液を、少量だけ移します。2剤ある場合は、指定された割合で測り取って、綿棒などで充分に混ぜ合わせます。

【手順2】
白髪染め液を、綿棒で腕の内側に、10円硬貨の大きさにうすく塗ります。衣服につかないよう注意しながら、自然乾燥するまで待ちます。

【手順3】
48時間経過して、塗った部分に発疹、発赤、かゆみ、水泡、刺激などの異常がないか確認します。異常があった場合は、すぐに洗い流して、白髪染めは使用しません。48時間以内に異常があった場合も、同様です。

【手順4】
異常が認められなかった場合は、白髪染めを行って下さい。

 

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