ヘナ白髪染めトリートメント~妊娠中の危険性や癌とローソンの関係は?
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2019/10/03
インド、エジプト、中国南部、北アフリカなどで広く栽培される、ミソハギ科の植物ヘンナ(ヘナ、Lawsonia inermis、以下ヘナと呼ぶ)。インドや中近東で、葉に含まれるローソン(Lawsone)を利用して、皮膚や髪を染める天然の染料に使うことは、あまりにも有名です。
また、中国伝統医学では、傷の治療や解熱、解毒、抗炎症の薬として使用されるといいます。
このように、良い面ばかりを強調するのは簡単なのですが、はたしてマイナス面がどれほどあるのか。念のため、確認しておく必要があるでしょう。
いくら天然の植物といっても、はてしなく無害というのはあり得ないことだし、許容量が常識の範囲内かどうか気になるところです。
当記事では、2016年3月に米国ハーブ製品協会(AHPA)から発行された、「メディカルハーブ安全性ハンドブック(以下、「ハンドブック」と呼ぶ)」を参考にして、ヘナの安全性を整理します。
さらに、葉だけでなく、花の成分で判明したヘナの新たな効果を、2つの論文から紹介しました。あまり世間に知られていませんが、驚くべき化粧品が生まれるかもしれません。
出典:ハンドブック 表紙
本題に入る前に、結論のポイントだけを簡単にまとめておくと、次のようになります。
- ラットに対する試験では、妊娠中のヘナ使用による、胎児への毒性は認められない。
- 授乳期間中における、ヘナの安全性情報については、不明。
- 近年の研究では、ローソンに発がん性のリスクは無い。
- 乳幼児および子供には、使用してはならないケースがある。
- ヘナは、外用のみに使用すること。
- べラックヘナには、くれぐれも要注意。
- ヘナの花部に含まれる成分に、「アンチエイジング効果」や「放射線による細胞障害への予防・回復効果」が認められる。
本物の純粋なヘナを選ぶなら、以下をご覧ください。
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目次
ヘナ白髪染めトリートメントの安全性
ヘナの使用による「白髪染めトリートメント効果」とは、どの程度の安全性を前提にした成果なのか、利用するからには知っておきたいところでしょう。
ヘナカラー(ヘナ白髪染め)の全体像については、以下の記事を参考にしてください。
⇒ ヘナカラー(ヘナ白髪染め)~数千年の時を重ね脈々と受け継がれる伝説
妊娠中のヘナ使用に危険性は?
ハンドブックにおける評価の概要は、以下に添付した画像のとおりで、最後の項目として、妊娠中のヘナ使用における安全性(危険性)が掲載されています。
概要に続いて掲載されている、「レビュー詳細」の内容とともに,詳しく見てみましょう。
出典:同書 438ページ
(赤線は当サイトによる)
出典:同書 439・440ページ レビュー詳細
(赤線は当サイトによる)
評価は「妊婦」と「授乳婦」に分けて記述されており、あらためて内容をまとめると、次のようになります。
【妊婦】
-
ラットに対して、3段階の用量で試験したところ、いずれにおいても胎児毒性は認められなかった。
-
3段階のうち、最高用量で、わずかな母体毒性があった。
-
母体にとって、無毒というためには、一定量よりも少ない必要がある。
(妊娠6~15日のラットに経口投与された、2、7、20mg/kgが、ヒトの場合では1日にどの程度の量に当たるのか、明らかではありません。)
【授乳婦】
授乳期間中における、ヘナの安全性情報は、確認されていません。
癌とローソンの関係は?
ハンドブックの概要には記述されていませんが、「レビュー詳細」の最後に、「遺伝毒性」という項目があります。
その内容(以下の画像)のうち、赤線部分が、ローソンと発がん性に関する部分です。非常に分かりにくいので、注意深く読む必要があります。
出典:同書 440ページ
(赤線は当サイトによる)
【補足】
-
in vitro:試験管内での試験。
-
in vivo:生体内での試験。
-
変異原性(または遺伝毒性):遺伝情報に、変化を引き起こす性質。ここでは、「発がん性」と置きかえてください。
要するに、化粧品および非食品に関するEU科学委員会(SCCNFP)は2002年、ローソンの発がん性を理由に、染料として適していないと結論づけたわけです。
問題は、その次の文章(赤下線の部分)に記述されている、「近年の研究では、ローソンの変異原活性の欠如を示している」の意味。「発がん性はない」と、解釈できそうです。
そこで、文中のカッコ内にある参考文献「Kirkland and Marzin 2003; Marzin and Kirkland 2004」を、念のため調べておきます。
具体的には、ハンドブックの参考文献に記述されている、「Kirkland D., and Marzin D. 2003. An assessment of the genotoxicity of 2-hydroxy-1,4-naphthoquinone, the natural dye ingredient of Henna.」という論文です。
参考文献は、インターネット上で閲覧することができ、画像を以下に添付します。
Kirkland D., Marzin D. 2003 Jun 6
An assessment of the genotoxicity of 2-hydroxy-1,4-naphthoquinone, the natural dye ingredient of Henna.
出典:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12787822
なお、「2-Hydroxy-1,4-naphthoquinone (2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン)」とは、国際純正・応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry、IUPAC)が定めるローソンの名称。
上の論文では、ローソンを「HNQ」と略しています。
【最後の文章(赤の下線部分)】
Henna and HNQ pose no genotoxic risk to the consumer.
ヘナ(Henna、ヘンナ)とローソン(HNQ)は、消費者に対して、遺伝毒性の危険を、全くもたらさない。
つまり、近年の研究では、ローソンに発がん性は認められないということです。
乳幼児や子供の使用に危険性は?
ヘナは外用のみに使用し、「グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症のある乳幼児および子供の使用禁止」と記述されており、該当する場合は危険性が高いので注意してください。
「グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症」とは、遺伝子疾患の1つで、赤血球がもろくなって貧血を引きおこすものです。
出典:同書 438ページ
(赤線は当サイトによる)
具体的には、「グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症」の小児に対して、ヘナを使用した後に、遺伝性疾患として知られるソラマメ中毒、溶血性貧血、高ビリルビン血症が報告されているそうです。
致命的な急性腎不全を、発症した例もあるとのことでした。
なお、成人による使用で、そのような有害作用の症例報告は確認されないようです。
飲む危険性は?
ハンドブックの先頭(禁忌:してはならない)には、「外用のみの使用」と記述されており、飲むと危険性がかなり高いといえます。
レビュー詳細には、「誤ってヘナ粉末を小さじ2杯摂取した、イラク北部生まれの69歳の男性で、溶血、腎不全、心虚血が報告された。」と記述されています。
さらに、「ラットに対してローソンを13週間経口投与した場合、1日当たり20mg/kgを超えると、腎臓、噴門洞、脾臓に影響を与え」との記述もありました。
出典:同書 438ページ
(赤線は当サイトによる)
ブラックヘナの危険性は?
ブラックヘナの危険性については、他の記事でも何度か取りあげています。同書の439ページには、以下のような意味の記述があります。
いくつかのヘナ、特に「ブラックヘナ」として販売されているものは、しばしば皮膚にかぶれが起こり、アレルギー性接触皮膚炎の多くの原因となる。
そのうちのいくつかは、永久的にあとが残る原因となる黒染色剤、パラフェニレンジアミン(PPD)が混合されている。
パラフェニレンジアミン(PPD)は、ヘナ(Lawsonia inermis )に含まれていない。
この件について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
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ヘナ白髪染めトリートメント~新たに判明した効果
前半では、ヘナの葉の成分であるローソンを中心にして、「白髪染めトリートメント効果」の裏側に存在する危険性を検証しました。後半は、ヘナの花に関して、新たに判明した効果を紹介します。
ヘナの花の部分に関しては、研究や応用例が非常に少なく、ハンドブックにも掲載されていなかったものです。
ヘナの基本について、「ヘナ白髪染めトリートメントの効果と安全性~美容院プロがアドバイス!」に整理しましたので、合わせてご覧ください。
アンチエイジング効果
フレグランスジャーナルの2013年10月号に、「ヘンナ花部のAGEs生成抑制作用及び糖化環境下での細胞障害への抵抗性改善作用」という論文が掲載されています。執筆者は、京都薬科大学 生薬学分野 中嶋聡一さんと松田久司さんです。
この論文は、ヘナの花に含まれる成分に、アンチエイジング効果があることを示す、希少な研究といえるものです。
出典:フレグランスジャーナル
2013年10月号 表紙
具体的には、ヘナ花部の成分が、老化に関する物質「AGEs (advanced glycation end products)」の、生成をおさえる働きがあることを示しています。
AGEsとは、食事などで摂りすぎた糖とタンパク質が結びついて生成・蓄積される物質で、タンパク質は本来の働きができなくなって、カラダの機能に影響するものです。ヒトの加齢や健康に関わる物質とされています。
インド産ヘナ花部のメタノール抽出エキスに含まれる成分のうち、特にcorosolic acidなどに、AGEsの生成をおさえて細胞を保護するという、アンチエイジング作用を示すことが認められたといいます。
これによって、新たな化粧品原料として、ヘナ花部も期待できるようです。
放射線による細胞障害への予防・回復効果
次は、フレグランスジャーナルの2016年7月号に掲載された、「過度の放射線暴露による細胞障害に対するヘンナ(ヘナ、Lawsonia inermis)花部の予防作用」という論文。
執筆者は、京都薬科大学 生薬学分野 中嶋聡一さん、尾田好美さん、中村誠宏さん、古川茉奈さん、大西絵梨さん、松田久司さんです。
出典:フレグランスジャーナル
2016年7月号 表紙
先ほどと同じように、ヘナ花部のメタノール抽出エキスに含まれる成分(とくにpolygoacetophenoside)が、放射線による細胞障害への保護作用を持ち、しかも細胞毒性は認められなかったそうです。
急に放射線を浴びるというリスクがある中で、放射線による細胞障害を予防または回復するような、化粧品や肌の防御剤の開発に期待が持てそうです。
まとめ
ヘナの葉に含まれるローソンには、白髪染めトリートメント効果のある反面、一定のリスクが存在します。通常使用で問題はありませんが、念のためリスクも認識しておいてください。
また、あまり知られていない、ヘナの花部に含まれる成分の、新たな効果も判明しました。
- ラットによる試験では、妊娠中の使用で、胎児への毒性は認められない。
- 授乳期間中の、ヘナの安全性に関する情報については、不明。
- 近年の研究では、ローソンに発がん性のリスクは無い。
- グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症のある、乳幼児および子供には、使用禁止。
- ヘナは、外用のみに使用すること。
- べラックヘナには、パラフェニレンジアミン(アレルギー性接触皮膚炎の原因)の、配合されている可能性がある。
- ヘナの花部に含まれる成分に、「アンチエイジング効果」や「放射線による細胞障害への予防・回復効果」が認められる。
さらに詳しくは、以下をご覧ください。
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