白髪は遺伝で発生するのですか?医学の考え方と若白髪の確率を解説!
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2020/05/26
多くの人が、白髪は遺伝で発生する、と考えているようです。肌の色が引き継がれるのだから、髪も同じだろうと考えるのは、自然なことなのかもしれません。
ところが、肌の色は必ず引き継がれますが、白髪は違います。親が白髪または若白髪でも、子供が同じとはかぎらないのです。
そもそも、年を取っても白髪になる人とならない人がいますから、加齢は白髪の原因ではないわけです。
親子で白髪が引き継がれるとはかぎらないのに、なぜ多くの人が、遺伝を白髪の原因だと考えるのでしょうか。
それは、理由や根拠を知らされないままに、「白髪は遺伝」と念仏のように、世間が唱え続けてきたから。いつのまにか、頭の中にインプットされてしまったのです。
結論からいうと、「遺伝は白髪の原因ではありません」。その根拠を、これからお見せしましょう。人体に関する質問なのですから、答えは医学の世界に見いだすべきだと、当サイトは考えます。
目次
白髪は遺伝なのか~医学の考え方
はたして、白髪は遺伝なのか、その真相を医学関連の論文や図書に求めてみます。世間に流通する身元不明の情報と違って、情報の発信元となる団体名や著者の名前および肩書が、明確だからです。
科学誌の研究記事
白髪は遺伝なのか、最初に取りあげる記事は、ニューズウィーク日本版(2016年3月22日号)の、「DNA(遺伝子)に働き掛けて白髪を退治」。
ここで紹介しているのは、2016年3月の英科学誌「ネイチャーコミュニケーションズ」に掲載された研究内容。毛髪の色つやを決定する遺伝子が、ついに突きとめられたといいます。
出典:ニューズウィーク日本版
2016年3月22日号 78ページ
この研究は、中南米の6000人(ヨーロッパ系・アメリカ先住民・アフリカ系)を対象にしており、遺伝子的なかたよりを除く工夫がされています。
黒髪のもとであるメラニンの生産量をおさえる働きをするのは、「IRF4」という遺伝子であることが分かったそうです。
毛包(毛根を包む組織)の形を決める酵素の生産量を決めるのは、「PRSS53」という遺伝子。直毛やクセ毛などの特徴は、毛包(毛根を包む組織)の形で決まります。
さらに、頭髪の外見や感触などに影響を与える、18個の遺伝子が特定されました。
ここで注意しなければならないのは、「遺伝子の特定」と「メカニズムの解明」は違う、ということです。
白髪を例にすると、「引き金が引かれる ⇒ 白髪のメカニズム(原因)が動き始める ⇒ 白髪になる」という順序をたどります。「引き金」にあたる遺伝子の一部は特定されましたが、白髪のメカニズムが明らかになったわけではありません。
医学大辞典
白髪は遺伝なのか、基本にもどるために開くのは、医学・医療の業界から信頼を得ている「南山堂 医学大辞典」。1954年に国内で初めて日本人によって作製された、総合的な医学専門辞典です。
出典:南山堂 医学大辞典 表紙
「白毛(はくもう、医学用語で白髪のこと)」を、次のように解説しています。
序文、先天性白毛、後天性限局性白毛、若白髪と4つの部分に分けました。序文には一般的な白髪の特徴として、「加齢(老化)とともに白髪が増える傾向がある」と書かれています。
先天性白毛は「生まれつきの白髪体質」、後天性限局性白毛は「病気による白髪」ですが、今回のテーマとしては対象外と考えます。
医学大辞典で明確になったのは、次の2点です。
- 一般的な白髪に関しては、遺伝の記述がまったくない。
- 若白髪は、「優性遺伝性」と断定している。
医学専門家の論文
白髪は遺伝なのか、次に取りあげる図書は、2006年6月8日 南山堂 発行の、「毛の悩みに応える 皮膚科診療 毛髪最前線」。板見智 大阪大学教授と宮地良樹 京都大学教授による監修で、23名の医学専門家が執筆した論文集です。
白髪と遺伝の関係を知るヒントとして、以下のような意味の表が掲載されています。
出典:毛の悩みに応える 皮膚科診療
毛髪最前線 表紙
1 【全身におよぶ境界線のない白髪】
1) 加齢に伴う白髪
2) 若白髪
a) 遺伝性のもの
b) 自己免疫によるもの(甲状腺機能亢進症、ビタミンB12欠乏症(悪性貧血)など)
3) 生まれた時から色素がないことによるもの(白皮症など)
4) その他の白髪
a) 栄養障害によるもの
b) 自己免疫によるもの(尋常性白斑、甲状腺機能亢進症、ビタミンB12欠乏症(悪性貧血)など)
c) 放射線や薬剤などによるもの
2 【部分的で境界線がはっきりしている白髪】
1) 部分的な白皮症など
2) 自己免疫によるもの(尋常性白斑、円形脱毛症など)
3) 放射線や薬剤などによるもの
出典:毛の悩みに応える 皮膚科診療 毛髪最前線 144ページ
これまでの内容から判断すると、病気の場合を除けば、白髪に次の2通りあることが分かります。
- 加齢(老化)にともなう、一般的な白髪。
- 優性遺伝性の、若白髪。
白髪は遺伝なのか
さらに大事なことは、どの資料にも「白髪の原因」は書かれていない、という点。
「引き金が引かれる ⇒ 白髪のメカニズム(原因)が動き始める ⇒ 白髪になる」のうち、「引き金」として、「加齢(老化)」や「優性遺伝性」もありますよ、ということです。
「加齢(老化)」という引き金は、すべての人に引かれますが、それによって白髪のメカニズム(原因)が動き始める人と、そうでない人がいます。
「優性遺伝性」という引き金は、その遺伝子を持つ人のみに引かれ、必ず白髪のメカニズム(原因)が動き始めます。
ただし、白髪のメカニズム(原因)がいくつ存在し、どの引き金によって、どのメカニズム(原因)が動き始めるのかは、いまのところ不明なのです。
「白髪は遺伝なのか?」という質問に対しては、以下の2点が答えとなります。
- 一般的な白髪の原因は不明で、遺伝とは関係ありません。
- 若白髪の原因も不明ですが、引き金は「優性遺伝性」です。
「原因は不明」と書きましたが、医学大辞典を解読すれば、原因の候補を特定することは可能です。一般的な白髪も若白髪も原因は同じなので、次に解説します。
さらに後半では、若白髪の「優性遺伝性」について、具体例を見てみましょう。
白髪の原因
もともと頭髪には色素が含まれていないので、白髪です。白髪に黒色の色素(ユーメラニンといいます)が入りこめば、黒髪となります。
つまり白髪の原因とは、もともと白髪だった頭髪に、黒色の色素が運びこまれないこと。黒色の色素を作る色素細胞(メラノサイトともいいます)から、色素を運ぶ輸送システムまでの、どこかに機能不全が発生すれば、黒髪は白髪にもどってしまうわけです。
色素細胞(メラノサイト)の中で、じっさいに色素を作り出すのが、メラノソームという小器官。
メラノソームの中では、チロシナーゼという酵素が作用することによって、チロシンというたんぱく質が色素(黒色のユーメラニンか黄色のフェオメラニン)へと変化していきます。
色素の製造から輸送システムまでのうち、経路が途切れる可能性として考えられるのは4ヶ所です。「加齢(老化)に伴う白髪」も「優性遺伝性の若白髪」も、4ヶ所のどこか(または複数)が機能不全になった結果といえます。
出展:FRAGRANCE JOURNAL 2014年3月 30ページ
(赤字部分は当サイトによる)
【白髪の原因1】
色素を作り出す細胞である色素細胞(メラノサイト)が、減るかなくなってしまった。
【白髪の原因2】
色素細胞(メラノサイト)は存在しても、メラノソームが減るかなくなってしまった。人種によって色素細胞(メラノサイト)の数や分布は変わりませんが、メラノソームの数が異なることが分かっています。
【白髪の原因3】
メラノソームの中で、黒色の色素(ユーメラニン)が作られなくなってしまった。具体的には材料のチロシン不足か、酵素のチロシナーゼ不足。白蛇や白虎など白皮症の原因がチロシナーゼであることが分かっています。
【白髪の原因4】
黒色の色素(ユーメラニン)は正常に作られたが、毛母細胞に運び込むための輸送システムが機能しなくなった。
詳しくは、「毛髪の科学(全4回シリーズ)」をご覧ください。以下の記事は、その第1回目です。
⇒ 白髪の原因とメカニズム解明!メラニン色素で黒髪に見える理由とは?
若白髪は遺伝なのか
原因は特定されていませんが、引き金が「優性遺伝性」と断定されている若白髪。優性遺伝性のメカニズムは明確ですから、現象を説明することは可能です。
詳しくは、「若白髪(全3回シリーズ)」をご覧ください。以下の記事は、その第1回目です。
⇒ 白髪の原因は遺伝?若い男性(10代で若白髪の男)の研究結果とは!
優性遺伝性
たとえば血液型を例にすると、遺伝子は「A」「B」「O」の3種類です。血液型は、2つの遺伝子の組み合わせ(父親から1つ、母親から1つ)で決まります。
血液型の遺伝子は「A」と「B」が優性で、「O」は劣性。その結果「AB」はAB型、「AA」「AO」はA型、「BB」「BO」はB型、O型は「OO」のみ。
上図左は、父親がA型(AA)で母親がB型(BB)のケース。子どもが保有する遺伝子はすべて「AB」ですから、血液型は「AB型」のみです。
上図中は、父親がA型(AO)で母親がB型(BO)です。子どもが保有する遺伝子は、「AB」「AO」「BO」「OO」の4通り。つまり子供の血液型は、「AB型」「A型」「B型」「O型」の全てについて可能性があります。
上図右のように父親も母親もA型(AO)であれば、子どもは「AA」「AO」「OO」の3通りで、「A型」か「O型」です。このルールにしたがって、すべてのパターンにおいて血液型を特定することができます。
若白髪になる確率
若白髪の遺伝子を「若」、そうでないものを「黒」とします。「若」は優性ですから、「若若」「若黒」は若白髪で、「黒黒」は若白髪ではありません。「黒黒」は若白髪でないものの、加齢(老化)に伴う白髪になる可能性はあります。
父親も母親も「若若」の場合は、子供の遺伝子は「若若」のみです。100%の確率で、若白髪になります。
父親「若若」、母親「若黒」の場合、子供は「若若」か「若黒」。いずれも優性の「若」を含むため、100%の確率で若白髪になります。
父親「若若」、母親「黒黒」だと、子供は「若黒」のみ。やはり100%の確率で若白髪になります。
父親「若黒」、母親「黒黒」だと、子供は「若黒」か「黒黒」です。「若黒」で若白髪になる確率が50%。残り50%は「黒黒」で、若白髪にはなりませんが、加齢(老化)に伴う白髪になる可能性はあります。
両親ともに「若黒」の場合、子供の遺伝子は「若若」「若黒」「黒黒」の3パターンすべて可能性があります。「若若」で若白髪になる確率が25%、「若黒」で若白髪になる確率が50%、「黒黒」で若白髪にならない確率が25%です。
若白髪は、優性遺伝のルールにもとづいて、ルールどおりの確率で現れます。加齢(老化)に伴う白髪よりも、早く現れただけであると理解してください。
白髪は遺伝なのか~まとめ
一般的な白髪と若白髪は、白髪としての原因は同じで、以下の4つが考えられます。
- 色素を作る色素細胞が、減るか、なくなった。
- 色素細胞の中で、じっさいに色素を作るメラノソームが、減るか、なくなった。
- 色素の材料が、減るか、なくなった。
- 色素を髪に運ぶ輸送システムが、正常に機能しなくなった。
一般的な白髪と遺伝は、関係ありません。若白髪は「優性遺伝性」が引き金となり、どの原因に対する引き金なのかは不明です。
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