白髪の原因

白髪を抜くと増える?抜いたらはげる?切るほうがいいですか?

 

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2020/05/26

 

白髪については多くの言い伝えがあり、真相がわからないものもあります。先祖の知恵といえるのか、根拠のない迷信なのか、関連図書をもとに検証します。

本題に入る前に、少し横道にそれてしまいますが、小説で言い伝えをどのように表現しているか、確認してみましょう。

 

 

星新一の短編「儀式」に、異星人の話が出てきます。異星人が基地を作っているところを、地方の気象観測員が目撃して、本部に報告しました。

マスコミを含めた大勢で、元の場所に戻ったところ、何もありません。気象観測員が変になった、ということで決着します。

 

翌日おなじ場所で、また異星人が基地を作っていました。ところが、気象観測員はもう変人扱いされたくないし、ヘタをするとクビになってしまうので、いっさい報告しません。

 

 

異星人には、言い伝えがあったそうです。

 

最初に簡単な基地を作っていったん取り壊し、あらたに本格的な基地を作る事!

 

儀式の意味を理解する異星人は一人もいませんが、すべての異星人は必ず儀式を守ります。じつはこの言い伝え、「人間の反応の仕方」を熟知した先祖の知恵が、込められたものだったのです。

 

白髪を抜くと増える?

白髪を抜くと増える。そう言われてしまうと、本当のような気もするし。でも、目立つ数本だけは抜いておきたい。抜くと、増えてしまうかな。

悩む前に、真相を確認しましょう。

 

「白髪を抜くと増える」に科学的な根拠はない

毛髪科学の観点から、「白髪を抜くと増える」を解説した図書があります。2009年5月15日 集英社新書 発行の「専門医が語る毛髪科学最前線」(板見智 著)。

著者は大阪大学医学部を出て、現在は大阪大学大学院教授(皮膚・毛髪再生医学)をしておられます。

 

出典:専門医が語る毛髪科学最前線 表紙

 

科学的根拠は、まったくない。白髪を抜くことで、周囲のメラノサイトが悪影響を受けることはない。でも、抜かないこと。抜いたら、あとに新しく生えてくるのは間違いなく白髪だから、白髪が減ることはない。無理やり白髪を抜くことで毛根の形が変わり、次に生えてくる白髪にウェーブのかかることがある。結果としてますます白髪が目立ってしまう。

(出典:専門医が語る毛髪科学最前線)

 

白髪を抜くと周りの黒髪に影響は

下に添付した画像は、毛髪の構造を示すものです。図左は約60年前に発行された図書をもとにして、当サイトがメモから復元したもの。図右は最新のものですが、2つに違いのないことが分かります。

図には書かれていませんが、後に説明する「色素」や「色素細胞」に関する認識も、半世紀前と現在でまったく違いはありません。

 

 

では、半世紀前と現在とで、何が異なるのか。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
⇒ 白髪の多い人と少ない人?生え方でき方は半世紀前からの常識でした!

 

毛髪が黒く見えるのは、黒色の色素(ユーメラニンといいます)が毛髪に含まれているから。黒色の色素は、色素細胞(メラノサイトといいます)で作られます。

毛髪に色素のない状態が、白髪です。白髪を抜いたとき、すでに色素細胞は色素を作っていなかったわけです。

 

ただし、白髪を抜いても周りの色素細胞は傷つけませんから、白髪の周りの黒髪には影響しないのです。

 

白髪を抜いたら増えるのか

図右に星印が描かれていて、「毛母」と書かれています。これは毛母細胞といって、毛髪を作り出す細胞です。

色素細胞は毛母細胞と隣り合ったところにあります。色素細胞で作られた黒色の色素が毛母細胞に運ばれ、毛母細胞が細胞分裂によって毛髪を作るときに、黒色の色素が毛髪に入り込んでいくわけです。

 

 

皮膚は、表皮と真皮(表皮よりも奥)からなります。最も大きな違いは、真皮に毛細血管が通っている、つまり真皮には血液が流れていることです。

スリ傷をおった時にわかるように、浅い傷と深い傷では、ずいぶん様子がちがいます。表皮と違って、真皮には血液が流れているからです。

 

重要なのは、色素細胞や毛母細胞の場所が、図のとおり真皮の部分ということ。

 

下図に示すように、毛髪のうち皮膚から外に出ている部分を毛幹、皮膚の中にある部分を毛根、色素細胞や毛母細胞がある部分を毛球、といいます。

白髪や黒髪を抜いて、血が出る人はいないでしょう。血が出たら、もはやケガのレベルです。つまり白髪を抜くとしても、毛球は完全に残ったまま、毛根の途中で切れてしまいます。

抜いたとき、根本に白いつぶがある場合は、下図の「内毛根鞘」「外毛根鞘」が少しついているからです。

 

出典:細胞工学 2013年9月 vol.32
No.10 1039ページ
赤字は当サイトによる

 

白髪が生えているということは、毛母細胞は活動しているけれども、髪に黒色の色素が運ばれてこない状態です。

ということは、白髪を抜いても毛母細胞は残っているので、再び毛髪は生えてきます。ところが、黒色の色素は運ばれてこない状態ですから、再び生えてくる毛髪は白髪というわけです。

 

毛母細胞は変わらないので、毛髪の本数も変わりません。

白髪を抜いて毛根あたりの向きが変わると、白髪にウェーブがかかって、前よりも目立ってしまうことがあるようです。

 

白髪を抜くということは、数本の白髪が気になりだした、生え始めの頃に多いでしょう。

生え始めの頃は、白髪の数が少しでも増えると目立ちます。見た目に白髪が増える印象を強く感じるので、よけいに「白髪を抜くと増える」という言い伝えが、信じられてきたのかもしれません。

 

白髪を抜いたらはげる?

「白髪を抜くと増える」に科学的な根拠がないことは分かりましたが、逆に「抜いたらはげる」ということはあるのでしょうか。

 

 

白髪を抜いても毛球は残り、毛母細胞は抜く前と同じ状態です。

ということは、毛髪の本数も変わらないため、白髪も黒髪も抜いて「はげる」ことはありません。

 

白髪は切る、抜いたほうがいい?

「白髪を抜くと増える」ことも、「抜いたらはげる」こともないことが分かりました。では、要するに白髪を見つけたときには、「切る」と「抜く」どちらにするべきでしょうか。

 

さきほど説明したように、白髪を抜くと毛根あたりの向きが変わって、白髪にウェーブがかかって目立つということがあります。

抜くのではなく、「切る」が正解です。

白髪を1本だけつまみ、ハサミを白髪の根元まで下ろしていって、黒髪を切らないよう注意しながら切ってください。

鼻毛バサミのような、刃先が丸く肌を傷つけにくいものを使うと良いでしょう。

 

白髪の人はハゲない(抜けにくい)?

「白髪を抜くと増える」ことも、「抜いたらはげる」こともありませんが、そもそも「白髪の人はハゲない」という言い伝えは本当なのでしょうか。

 

毛髪を作り出すのは、毛母細胞による細胞分裂です。「白髪の人」と「黒髪の人」の、どちらが薄毛になりやすいか。

その答えを出すためには、「白髪の人」と「黒髪の人」の毛母細胞を比較しなければなりません。

 

 

そのような視点では、まだ科学的な決着がついていないそうです。図書の中では、「白髪とハゲ」の関係は、科学的な根拠のない言い伝えと記述されています。

科学的な根拠がないからといって、間違いとは限りませんから、当サイトとしてはこの言い伝えの真偽は不明としておきます。

 

白髪は、まわりの黒髪より太い?

最後に、図書では触れていませんでしたが、「白髪は、まわりの黒髪より太い」という言い伝えについて。じつは、この言い伝えは少なくとも30年以上前に、結論が出ています。

1984年(昭和59年)3月に発行された、「大阪樟蔭女子大学 論集 第21号 白髪の強度について 野上昭子・宇野虹ニ」という論文です。

 

出典:大阪樟蔭女子大学 論集
第21号 表紙

 

出展:大阪樟蔭女子大学 論集
第21号 107ページ

 

ある日本人男性の、59才から61才にかけて、自然に抜けた頭髪を入手します。

入手した頭髪には、黒髪と白髪が含まれており、太さを比べた結果が論文に掲載されているのです。

 

結論は、髪の太さの分布に変わりはなく、昔から言われる「毛の太い人は白髪になりやすい」という俗説はあまり関係なさそうだと書かれています。

つまり、「白髪は、まわりの黒髪より太い」という言い伝えも、あまり関係なさそうです。

 

なぜ、このような言い伝えが登場したのか。白髪が増えてくると、黒髪と白髪のまざった状態になります。

白色は膨張色なので、同じ太さでも黒髪より白髪のほうが太く見える、それが言い伝えの生まれた理由ではないでしょうか。

 

白髪を抜く~まとめ

白髪を抜くと増えるのか、抜いたらはげるのか、白髪は切るのか、抜いたほうがいいのか。

答えは、とても単純です。抜いても、増えません。抜いても、はげません。抜かずに、切りましょう!

 

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