白髪の多い人と少ない人?生え方でき方は半世紀前からの常識でした!
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2020/05/26
白髪の多い人と少ない人には、どのような違いがあるのでしょうか。
よくよく調べてみると、白髪の生え方(でき方)に関するメカニズムは、半世紀前からすでに常識だったことがわかります。
「毛髪の科学」的な最も古い資料をたどって見つけた資料は、1961年に東京丸の内理容文化学会というところが発行した、「世界人類毛髪発生学」という図書。
下の図左は、この図書に掲載されていた絵をメモから復元したものです。
「毛髪の科学」は、半世紀以上を経過して進歩したのかどうか。もし生え方(でき方)の研究に進歩がないのであれば、昔と今で悩みは変わらないはずです。
昔の絵(図左)をよくよく見ても、今現在さまざまなところで使用されている絵(例えば、図右)とまったく変わりがありません。
すくなくとも半世紀以上にわたって、肌や毛髪に関する基本的なメカニズムの考え方は同じなのです。
見つけた図書から、現在と考え方が同じ部分を拾います。次に、現在と異なる部分を明らかにして、何が進歩して何に期待できるのか探ってみましょう。
目次
白髪の多い人と少ない人~生え方(でき方)の常識1
白髪の生え方(でき方)に色素が大きく関係することは、いまや常識ともいえます。白髪の多い人は色素が少なく、白髪の少ない人は色素が多いということです。
色素は毛髪のみでなく、皮膚の色を決定する大きな要素であることも今や常識。というわけで、昔の常識を確認するために、皮膚の部分から見てみます。
皮膚は表側が表皮で、その内側に真皮があります。さらに詳しく分解すれば、表皮は「角質層(日焼けしてむける部分)」と「マルピギー層」の2層から成り立っているので、今と昔はピッタリと一致。
皮膚の色素細胞(メラノサイト、色素のメラニンを作る細胞)は表皮と真皮のあいだにありますから、この絵でいうとマルピギー層とその内側にある真皮との間です。
絵に書かれていませんが、図書の中では「色素細胞」という表現で記述されていました。当時ふつうに使われていた言葉だと思われます。
真皮のさらに内側には「皮下脂肪組織」があるのですが、絵の中のそれらしい部分に「皮下脂肪」と書かれているのです。
「皮脂腺」という言葉は、スキンケアに興味がある人なら誰でも知っているのではないでしょうか。文字どおり皮脂を作り出す器官で、生み出された皮脂と汗が混じって皮膚膜となり肌を守ります。
手のひらと足の裏を除く全身に分布して、毛穴とつながっているのが皮脂腺。汗腺と皮脂腺が別物であることは、覚えておいたほうが良いかもしれません。
白髪の多い人と少ない人~生え方(でき方)の常識2
次は、毛髪に移ります。白髪の生え方(でき方)と色素は、具体的にどのような関係があるのか。白髪が少ない人の髪に黒い色素が多いのは分かるとして、白髪の多い人はなぜ髪が白く見えるのでしょうか。
図書には「毛髪は3つの部分からできている。皮膚の外へ出ている部分を毛幹 、皮膚の内面にある部分を毛根 、毛根の下端の膨らんだ部分を毛球と呼ぶ」という意味のことが書いてあり、これも現在の見方とピッタリ一致します。
毛髪は爪と同じように、もととなる細胞(毛髪の場合は毛母細胞という)が分裂して、死んだあと集まり積もっていったものです。図書にも同様の記述があります。
毛髪を切断すると外側・中間部・中心部の3層に分かれていて、色素のメラニンが含まれるのは中間部。このことも図書の別部分に、絵とともに正しく説明されていました。
さらに、「白髪は毛皮質部に空気を含む間隙があって、色素顆粒がなくなると光線の反射で白色に見える。」との記述も。色素のメラニンが顆粒状の物質であることが、既に知られていたということです。
色素がないため、光が反射して白色に見えることも正確に記述され、光の物理的な性質も含めて、完ペキといえます。
というような事も記述されており、ほぼ現在の認識と一致します。
このように、基本部分の考え方は現在と変わりません。現在でも科学的な白髪の復旧方法は解明されていませんから、結論から言うとほとんど変わっていないということです。
半世紀以上も前からメカニズムは解明されているのに、いまだに解決策のわからない状態が続いているだけなのでしょうか。
白髪の多い人と少ない人~生え方(でき方)の進歩1
でも、すべてが全く同じというわけでもありません。
この図書をよく読んでみると、「毛髪の生え方(でき方)」と「白髪の生え方(でき方)」の2点について、現在とは決定的な違いがあります。白髪の多い少ないに関する、根本的な部分です。
1点目は、「毛髪が生み出されるメカニズムについて」。現在考えられているメカニズムは、毛球内にある毛乳頭が毛球内の毛母細胞に指令を出すことによって、毛母細胞が分裂して毛髪として成長していきます。
毛母細胞が活動するためのエネルギー源は、毛細血管から運ばれてくる酸素と栄養です。というか体のすべての細胞にとって、エネルギー源は血液によって運ばれてくる酸素と栄養といえます。
出展:細胞工学 2013年9月 vol.32 No.10 1039ページ
ところが図書の中には、次のような意味の記述があります。
「脂肪が毛髪の肥料栄養素」という考え方は、現在とまったく異なるものです。
白髪の多い人と少ない人~生え方(でき方)の進歩2
2点目は、白髪の多い人と少ない人を分ける色素とは、具体的に何かという点。これも白髪の生え方(でき方)に関する、決定的な部分です。
要するに、「毛髪の色を決定する色素の種類について」。
現時点で把握されているのは、わずか2種類の色素(「黒色のユーメラニン」と「黄色のフェオメラニン」)が髪の色を決定するすべてとなります。
いっぽう図書の中に見られるのは、次のような意味の記述です。
「毛髪の生理的色彩はメラニン色素の多少によって現われ、人種によって異なる。
メラニン色素の量が最大なのは黒色毛(アジア人種)、最少なのは淡黄色毛又はブロンド(北欧人種)、その中間量は黄褐色毛(ヨーロッパ人種)。
また毛髪の個有色説によれば褐色・黄色・紅色等の色素があって、この色素の差によって各人種の毛髪色が変化する。」
「色素のメラニンが毛髪の色を決定する」というメカニズムに変わりはありませんが、半世紀前にはメラニンの種類についてはまだ特定できていなかったことが分かりました。
以上の結果をどうとらえるか。「とても大きな進展をとげている」のではないでしょうか。
なぜならば、「毛髪が成長するメカニズム」と「白髪になるメカニズム」の2点とも、毛髪の「1丁目1番地」ですから。その2点のメカニズムが、現在は明確になっているのです。
半世紀以上も前と現在との大きな違いは、細胞や分子・遺伝子レベルでの研究が急速に進展したことといえるでしょう。
その具体的な例が、2015年8月31日 慶應義塾大学出版会による「色素細胞 第2版」(伊藤祥輔・柴原茂樹・錦織千佳子 監修)に掲載されています。
出展:2015年8月31日 慶應義塾大学出版会
色素細胞 第2版 表紙
この図書の中に、
という意味の文章があります。ミクロのレベルで、研究が加速化しているのは明らかです。
これこそが半世紀以上も前との違いであり、今後に期待感を抱かせる点でもあります。
白髪の多い人と少ない人~白髪と黒髪の違い
最後に、1つの研究(「白髪の多い人と少ない人の髪質の違い」)を紹介します。
顆粒状の色素であるメラニンが毛髪から全てなくなってしまうと、残された毛髪はどうなるのでしょうか。
その答えを求めて、ある視点をもとに研究した人が一昔前にいました。しかも大学生です。
「白髪」をタイトルに含む論文のうち2番目に古いのが、1984年(昭和59年)3月に発行された「大阪樟蔭女子大学 論集 第21号 白髪の強度について 野上昭子・宇野虹ニ」。
出展:大阪樟蔭女子大学 論集
第21号 107ページ
この研究の問題意識は、次のような点にあります。
- 白髪の原因は、毛根部でメラニン色素が作られなくなることにある。
- メラニン色素は顆粒のような形をしていて、毛皮質細胞の間に均一に分散している。
- 色素顆粒が作られなくなると、もともと顆粒があった部分はどうなるのだろうか。
- 空洞のままなのか、毛皮質細胞で埋められるのか。
- 空洞のままであれば、髪はもろくなっているだろう。
- では、黒髪と白髪の強度を比較してみよう。
ある日本人男性の、59才から61才にかけて自然に抜けた頭髪を入手して、黒髪・白髪・中国人女性を比較しています。
結果の1つ目は、髪の太さの分布に変わりはなく、昔から言われる「毛の太い人は白髪になりやすい」という俗説はあまり関係なさそうだという点。
2つ目は、細い頭髪を比べると、白髪のほうが黒髪よりもかなり強度が小さいという点。
どうやら白髪は空洞みたいです。
最後に、「次は若白髪を調べたい」とも書かれていました。結果はともかくとして、大学生でここまで研究する意欲に、驚いてしまいます!
まとめ
- 皮膚や毛髪の構造、色素メラニンが顆粒状で色素がないと光の反射で白髪に見えることなど、半世紀前には常識化していました。
- 毛髪のエネルギー源や色素の種類は、半世紀前にはまだ確定されていませんでした。
- 近年は、細胞や分子・遺伝子レベルでの研究が急速に進展しました。色素メラニンに関連する論文数は、30年で4倍と増加の一途をたどっています。
- 顆粒状の色素メラニンがなくなった白髪は、空洞で強度も小さくなります。
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