白髪の原因とコーヒーやタバコは無関係!飲酒(酒/アルコール)は?
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2020/05/26
白髪の原因と言われる、さまざまな言い伝え。その真相を確認してみると、ある「ことわざ」に通じることがあります。
「風が吹けば、桶屋が儲かる(かぜがふけば、おけやがもうかる)」。始めて登場したのは、江戸時代の浮世草子「世間学者気質(かたぎ)」巻三(無跡散人 著、1768年)だそうです。
さまざまなバージョンがある中で、北海道のオホーツク海沿岸(特に紋別市と網走市)には桶屋が多いらしく、北海道版もあるとか。話がそれてしまいますが、少しだけ見てみましょう。
【オリジナル・バージョン】
大風で土ほこりが立って人の目に入ると、世間に「盲人」が増える。
⇒ 三味線がよく売れる。(当時の盲人が就ける職から)
⇒ 三味線に使う猫の皮が多く必要になるので、世界中の猫が減る。
⇒ ネズミが増えて桶をかじる。
⇒ 桶の需要が増えて、桶屋が儲かる。
【北海道バージョン】
北風によって、流氷がやってくる。
⇒ 寒さが厳しくなって、特に夜間は室内でも気温が氷点下になる。
⇒ 漬物桶、風呂桶、漁具の桶が凍結して壊れる。
⇒ 桶の需要が増えて、桶屋が儲かる。
(出展:Wikipedia「風が吹けば桶屋が儲かる」)
このような話は、世の中に多いですね。その気にさえなれば、どんな「桶屋理論」でも作ることは可能です。はたして、コーヒー、タバコ、飲酒は、ほんとうに白髪の原因なのでしょうか。
目次
コーヒーは白髪の原因か
世界中で愛飲されるコーヒー、じつに多くの逸話が生まれてきました。はたして、白髪の原因でもあるのかどうか。
バルザックの「風俗研究」に、イギリスの実験が紹介されています。3人の死刑囚にそれぞれコーヒー、紅茶、チョコレートのどれかだけを与えて、どれくらい生きられるか試してみたというものです。
チョコレートだけで生きた死刑囚は八ヶ月後に、コーヒーだけの死刑囚は二年後に、紅茶だけの死刑囚は三年後に死んだ。よって紅茶が最も健康に良い、という結論。
さすが紅茶の国、イギリス!
18世紀のスウェーデン、国王グスタフ3世が実験をしたそうです。2人の死刑囚にそれぞれコーヒーか紅茶のどちらかだけを与えて、どれくらい生きられるか試してみたというもの。
ところが死刑囚は2人とも長寿をまっとうし、国王はその結果を知る前に暗殺されてしまったのです。
コーヒーや紅茶は、健康に良いのか、良くないのか。参考にすべき情報は、さらに続きます。
2010年に千葉県衛生研究所が発行した、「千葉県衛研年報 第59号」。
最初のページには、「特にコーヒー、紅茶及びウーロン茶等の市販飲料からは、0.03~30.8μg/gのH2O2が検出され」と書かれています。
出典:2010年 千葉県衛研年報 第59号 1ページ
H2O2とは過酸化水素で、いまでは知名度が高い「活性酸素」の代表例。有害物質で、細胞に損傷を与えます。
その過酸化水素が検出されたというのですから、世間はザワザワとし始めるわけです。
「コーヒーを飲むと、尿中の過酸化水素が他の飲料よりも多く検出された、と東京理科大学が発表した。」などという情報も存在しますが、出典不明のため確認することができません。
過酸化水素は細胞の遺伝子を損傷しますから、生物の健康にとって良いものではありません。ここまでの情報で判断してしまえば、カラダに良くないような気がしてきます。
ところが、さらに深くコーヒーを調べて見ると、有害物質とは真逆のすがたが見えてくるのです。
活性酸素に対抗するために、有効とされるのが、抗酸化物質。
ポリフェノールはその代表例ですが、コーヒーに含まれるポリフェノールはカフェインよりも多く、赤ワインと同じくらいの量が含まれるというのです。
出典:Nestle(ネスレ)「ポリフェノールとコーヒー」
そもそもポリフェノールというのは、植物が活性酸素から自分の身を守るために作り出す物質です。
有害物質の活性酸素から身を守るために、自分の力でポリフェノールを作り出すコーヒー、すばらしい植物ではありませんか。
こうなると、話は白髪どころではありません。コーヒーと健康、人類にとって永遠のテーマなのかもしれません。
タバコは白髪の原因か
コーヒーとは逆に、愛煙者が減り続ける、タバコ。その最も大きな理由は、煙に含まれる発がん性物質でしょう。
白髪の原因として取り上げられることが多いのは、ニコチンによる作用のようです。
(出典:Wikipedia「ニコチン」)
タバコを吸うことで毛細血管が収縮し、血行が悪くなることは明らかです。
ところが、血行が悪くなることと、のちに詳しく説明する白髪のメカニズムとは関係ない、といえます。
全身の細胞に「酸素と栄養」を届けるのは血液ですから、血行が良いことはカラダ全体にとって大事です。
とはいえ、「タバコを吸うと、白髪になる」という話には、「風が吹けば、桶屋が儲かる」的なムードが漂ってきます。
飲酒(酒・アルコール類)は白髪の原因か
白髪の原因として、飲酒(酒・アルコール類)が関係するのかどうか。この点を考えるときに注意が必要なのは、薄毛と白髪の関係です。具体的に見てみましょう。
「酒は百薬の長」といわれるのは、タバコのニコチンとは逆に、飲酒によって血管が膨張して血行が良くなるからと考えられます。
飲酒(酒・アルコール類)で血行が良くなれば、全身の細胞に届く酸素と栄養も増すというわけです。
適量の飲酒は体に良いとして、飲酒の量が多すぎるとどのような悪影響があるのでしょうか。2016年7月15日 白誠書房 発行 「薄毛治療の新常識」(麻生泰 著)。
著者は、AGAスキンクリニック 医師・統括診療部長で、医療法人社団東美会 理事長 兼 東京美容外科 統括院長をされています。麻生先生はこの図書の中で、「お酒の飲みすぎ」が体に及ぼす影響を解説されています。
出典:薄毛治療の新常識 表紙
体内に取り込まれた酒(アルコール類)は、肝臓で分解されて、毒性の「アセトアルデヒド(二日酔いの原因物質)」を作る。
⇒ アセトアルデヒドが分解酵素などによって酢酸となる過程で、アミノ酸(タンパク質のもとになる物質)やビタミン(ビタミンB)・ミネラル(亜鉛)が大量に消費される。
⇒ 毛髪の成長に必要な、アミノ酸が奪われてしまう。毛母細胞(毛髪を作り出す細胞)の活性化に必要な、亜鉛が不足してしまう。
さらに大量に飲酒すると、分解されずに血液中に残ったアセトアルデヒドが体の中をかけめぐる。
⇒ アセトアルデヒドが、ジヒドロテストステロン(DHT)を増加させる。
⇒ DHTは脱毛ホルモンなので、薄毛対策にはDHTを減らすことが何よりも優先される。
と記述されています。少なくとも大量の飲酒が、薄毛を引き起こすメカニズムは明らかですね。
「髪の毛を作る」ことと「髪の毛を黒くすること」、2つの関係を確認するためには、さらに深く白髪の原因を見ていく必要があります。
コーヒー・タバコ・飲酒(酒・アルコール類)は白髪の原因か
「コーヒー・タバコ・飲酒(酒・アルコール類)」と「白髪」の関係を知るために、そもそも「白髪の原因とは何なのか」という点を整理しておきます。
髪が黒く見えるのは、髪の中に黒色の色素(ユーメラニンといいます)が含まれているからです。
白髪の原因とは、何らかの理由で色素が髪に届けられなくこと。具体的には、4つ考えられます。
【原因その1】
黒色の色素を作り出す色素細胞が減るか、なくなった。
【原因その2】
色素細胞の中で実際に黒色の色素を作り出す器官(メラノソームといいます)の数が減るか、なくなった。
【原因その3】
メラノソームの中で、黒色の色素が作られなくなってしまった。
【原因その4】
黒色の色素は作られたが、色素細胞から頭髪に色素を運ぶ輸送システムが崩れて、結果的に頭髪まで運ばれなくなった。
たとえば黒色の色素を作る色素細胞がなくなれば、髪に色素が届く可能性はなくなるので白髪となる、それが「原因その1」です。
「南山堂 医学大辞典」には、「加齢とともに、色素細胞(英語でメラノサイト)は減少する」と書かれています。
出典:南山堂 医学大辞典 2420ページ
つまり、加齢は白髪の原因ではなく、「白髪の原因その1(色素細胞が減るか、なくなる)」を引き起こす、要素の1つにすぎません。
加齢によって色素細胞の減り方が激しければ白髪になるし、そうでなければ白髪にはならないということです。
「白髪の原因その1」を引き起こす要素として、毛包幹細胞の影響もあることが、最近になって発見されました。
髪を作るのは毛母細胞、毛母細胞を作るのが毛包幹細胞。その毛包幹細胞が、色素幹細胞(色素細胞を作る細胞)に活性化を促す司令塔だというのです。
飲酒(酒・アルコール類)で述べた、「髪の毛を作る」ことと「髪の毛を黒くすること」の関係性とは、この点にあります。
飲酒(酒・アルコール類)が白髪の原因を引き起こす要素と断言はできませんが、要注意とはいえそうです。
白髪の原因は、「毛髪の科学(全4回シリーズ)」で整理しました。詳しくは、以下の記事(第1回目)からご覧ください。
⇒ 白髪の原因とメカニズム解明!メラニン色素で黒髪に見える理由とは?
白髪の原因とコーヒー・タバコ・飲酒(酒・アルコール類)~まとめ
白髪の原因と、コーヒー、タバコ、飲酒(酒・アルコール類)との関係を別々に見てきましたが、最後に整理しておきます。
コーヒーとタバコは、白髪の原因と直接的に関係する要素ではありません。「風が吹けば、桶屋が儲かる」的な、ウワサといえるでしょう。
大量の飲酒(酒・アルコール類)が薄毛を引き起こすメカニズムは、明らかになっています。白髪を引き起こすと断言はできませんが、要注意といえるでしょう。
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