白髪は栄養不足が原因なのか~西洋医学と東洋医学の一致する見解とは?
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2020/05/26
FRAGRANCE JOURNAL 2016年6月号に、「肌・毛髪を美しく保つための内外美容の現状」(前田憲寿)という論文が掲載されています。
著者の前田憲寿さんは、九州大学 大学院 薬学研究科修了後に東北大学大学院 医学研究科(皮膚科学教室)へと進み、現在は東京工科大学教授です。
出展:FRAGRANCE JOURNAL
2016年6月号 表紙
この記事の序文に、以下のような一節があります。「xxx」には何という言葉が使われているか、わかりますか?
「加齢・老化によって xxx は衰えていくが、そのほかに、冬の乾燥、夏の紫外線、栄養不足、酸化やストレスに対する抵抗力の低下など、様々な要因が xxx に悪影響を及ぼしている。」
正解は「皮膚」なのですが、世間には似たような情報があふれています。
美肌はともかくとして、何でも「栄養不足」といえば良いというわけでもないでしょう。
もちろん、栄養が大事であることに異論はありませんが、はたして栄養不足が本当に白髪とつながるのでしょうか。
そのような問題意識で調べていくと、西洋医学と東洋医学の不思議な一致点が、見つかってしまうから面白いものです。
目次
白髪は栄養不足が原因か~そもそも栄養と酸素は必要
白髪の原因が栄養不足という情報を見て、なるほどと思う前に、いったん冷静に考えてみてください。そもそも、生物が生きるために必要なものとは、何でしょうか。
60兆個と言われてもピンとこないので、例えば1つの細胞を米1粒にたとえてみましょう。
六本木ヒルズの天井を開けて上から米粒を流し込んだとき、建物が完全に埋まってあふれて、さらに建物の半分が米粒でうまるくらいの数です。
1つ1つの細胞の中には1つの「核」があって、その中に「遺伝子」がふくまれていることを、ご存知のかたは多いでしょう。
それぞれの細胞1つの中に、500個くらいのミトコンドリアがあります。ミトコンドリアのおもな働きは、細胞が生きるためのエネルギーを作り出すこと。
生きるエネルギーを得るために、ミトコンドリアは24時間365日はたらき続けているのです。
ミトコンドリアが、エネルギーを作るために必要な材料は、栄養と酸素。血液が、材料を細胞に届けます。生きる仕組みとは、そのようなものです。
全身の細胞60兆個が生きているし、そのためには常にあらたな栄養と酸素が補給され続けなければなりません。
白髪か黒髪かの問題ではなく、そもそも栄養と酸素は、生きるために必要なものなのです。
白髪は栄養不足が原因か~栄養が必要なのは当たり前
白髪と栄養不足は、どこで結びつくのでしょうか。もともと毛髪は白髪で、色素メラニンが毛髪に入りこむから黒髪になります。色素メラニンを作るのは色素細胞ですから、栄養不足だと色素細胞が活動しない?
それでは活動しないどころか、細胞が生きていけません。色素細胞だけでなく、すべての細胞が。
ところで、生きるために必要なもう1つ、酸素不足が白髪の原因と言われないのはなぜなのか。
酸素が1分も不足すれば、生死にかかわりますから、言っても意味がないのです。
栄養の場合は、多少不足してもすぐに生死の問題とはならないし、人によって裁量の幅が大きいので、話題にしやすいのかもしれません。
もちろん「食生活と栄養」は大事ですが、全身の細胞が必要とするものであって、栄養が必要なのは生物として当たり前の話なのです。
ことさら、毛髪にかぎったことではありません。
白髪は栄養不足が原因か~可能性があるとすれば
白髪と栄養不足の関係を確認するために、「南山堂 医学大辞典」を開いてみます。白髪の原因として、多少でも栄養不足に関連する記述があるのでしょうか。
4つの部分に分けると、最初は序文で、次は「先天性白毛=生まれつきの白髪」、3つめに「後天性」つまり病気に関する記述があります。
あえて言えば、「吸収不全症候群=栄養の消化・吸収のはたらきがおとろえるもの」、が該当する部分です。命にかかわるような栄養障害になると、白髪が生える場合もあるということでしょう。
通常の生活を送っている人にとって、特に白髪と栄養を結びつけるような記述はありません。
いっぽうで、このページには「原因」という言葉が登場しない点に、着目すべきでしょう。白髪の解説に、原因が語られていないのです。
さらに進めて、色素細胞(メラノサイト)を引いてみると、「メラノサイトの数は加齢とともに減少する。」と書いてあります。
出典:南山堂 医学大辞典 2420ページ
つまり白髪の原因の1つは、黒髪のもと(ユーメラニン)を作る「色素細胞(メラノサイト)」が減少することで、その現象を引き起こす「引き金」として「加齢や老化」も候補の1つということです。
加齢や老化という「引き金」は全員に引かれるものの、そのことが「白髪の原因=色素細胞(メラノサイト)の減少」につながる人と、そうでない人がいるということになります。
「原因」と「引き金」の違いが明らかになったのは良いとして、色素細胞(メラノサイト)の解説には、栄養に関する記述がまったくありません。
栄養不足と白髪の因果関係が、いったいどこから生まれてきたのか、「風が吹けば、桶屋がもうかる」的なムードが漂います。
白髪の原因は4つが考えられ、そのうちの1つは「色素細胞(メラノサイト)が減少してなくなる」ことです。詳しくは、「毛髪の科学(全4回シリーズ)」を参考にしてください。
⇒ 白髪の原因とメカニズム解明!メラニン色素で黒髪に見える理由とは?
白髪は栄養不足が原因か~西洋医学と東洋医学の一致点
話をさらに進めて栄養不足を調べていくと、白髪の原因ではなく毛髪そのものについて、ある発見があります。西洋医学と東洋医学に、一致した見解を見出すことができるのです。
2016年7月15日 白誠書房 発行 「薄毛治療の新常識」(麻生泰 著)。著者は、AGAスキンクリニック 医師・統括診療部長、医療法人社団東美会 理事長 兼 東京美容外科 統括院長です。
出展:白誠書房 「薄毛治療の新常識」 表紙
この図書は薄毛治療に関するもので、白髪については語っていません。が、毛髪そのものの寿命には、注意をはらっておく必要があります。
なぜならば、毛包幹細胞(毛髪を作る細胞)と色素幹細胞(色素細胞を作る細胞)は、連動しているからです。
この著書の中に、以下のような記述があります。
体全体のシステムにおいて、優先順位があるというのは当然のことですから、記憶にしっかりとどめておくべきでしょう。
漢方理論では毛髪を「血の余り」と説き、血が余れば毛髪に充分な栄養が行きわたるし、不足すれば白髪や抜け毛などのトラブルが発生するという考え方もあるほどです。
詳しくは、以下の記事をご覧になってください。
⇒ 白髪の原因と生える場所(後頭部/前頭部/側頭部)と内臓(腎臓/胃/肝臓)
西洋医学と東洋医学の不思議な一致から考えると、食生活による栄養不足の状態が長く続いたら、まず毛髪に影響が出るようです。
必要な栄養を摂ることを心がけるのは、毛髪にとっても大事なことといえます。
最後に、血行・血流について。頭皮の血行・血流を良くするためのマッサージなどが推奨されることについて、麻生先生は効果を否定されています。
瞬間的に頭皮周辺の毛細血管が広がったとしても、すぐに戻るだろうし、頭皮だけ血行・血流を良くする事はできないだろうとのことです。
当サイトは、この考え方に対して全面的に賛成します。白髪と頭皮マッサージの関係を、当サイトの総集編として整理しました。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
⇒ 白髪の原因と予防や対策まとめ~頭皮マッサージの効果がついに判明!
そもそも全身の血液量は一定なのだから、仮に頭皮周辺の血行・血流だけが良くなったとしたら、他の部分は血行・血流が悪くなるはずなので、逆に問題ではないでしょうか。
白髪は栄養不足が原因か~まとめ
白髪の原因と栄養不足とは、「医学大辞典」を見るかぎりでは、まったく関連性がありません。いつのまのか、別のテーマと混ざってしまったと考えられます。
ただし、栄養と毛髪そのものとの関係を、見過ごすことはできません。西洋医学・東洋医学いずれの見解でも、体全体の優先順位から見れば、毛髪の優先順位は低いと考えられるからです。
当然のことではありますが、白髪改善のための栄養ではなく、体全体を考慮した栄養バランスを考えましょう。
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